ISO 14001「4.3 環境マネジメントシステムの適用範囲の決定」とは?
~まず“守備範囲”を決めて、ムリなく環境改善を進めよう~
1. はじめに
ISO 14001 に取り組むとき、最初につまずきやすいのが「EMSの適用範囲って、どこまで入れればいいの?」という問題です。
適用範囲があいまいなまま進めると ――
- 何を管理し、何を除外するのか分からない
- 責任の所在がぼやけて改善が止まる
- 審査や取引先から「本当に環境配慮しているの?」と疑われる
―― といったリスクが生じます。
そこで ISO 14001 は 4.3 項で「適用範囲を文書化し、外部から見ても分かるようにする」ことを要求しています。
2. 適用範囲を決める 3 つの観点
観点 |
かみ砕きポイント |
チェック例 |
① 会社の目的・状況 |
事業の種類、拠点、工程など |
製造/サービス/設計拠点など |
② 利害関係者のニーズ |
顧客・自治体・地域住民が求めること |
取引先のグリーン調達基準、ISO要求書 |
③ 管理・影響できる範囲 |
自社がコントロール可能か |
協力会社への作業指示・購買契約の有無 |
ワンポイント: “コントロールできる”=「直接指示できる」「契約で要求できる」レベルが目安です。
3. 事例で理解!適用範囲の決め方
事例① 製缶業(単一拠点・中小企業)
- 会社概要: 岐阜県関市の本社兼工場で設計~製造~出荷まで一貫対応
- 重要ポイント: 切粉・溶剤など製造由来の廃棄物が多い
適用範囲の例文
当社の環境マネジメントシステムは、岐阜県関市の本社兼工場における設計、製缶加工、塗装、出荷、廃棄物の社内管理までの全活動に適用する。外部委託した廃棄物処理プロセスは、契約により管理要求を伝達し監視する。
事例② 建設会社(複数拠点・現場主体)
- 会社概要: 東京本社(事務系)、千葉資材センター、大阪・名古屋など各現場
- 重要ポイント: 現場の廃材・粉じん・騒音が主な環境影響
適用範囲の例文
本環境マネジメントシステムは、千葉資材センターおよび当社が管理する全建設現場における資材保管・施工・廃棄物管理活動を対象とする。東京本社の事務業務は環境影響が軽微なため適用範囲外とする。
4. 適用範囲を文書化するコツ
- 文章は 1 ~ 2 段落で完結に
→ 長文だと読み手が混乱します。
- 除外対象を明示
→ “本社の事務業務は除外” など、理由もひと言添える。
- 判断根拠を内部記録で残す
→ 外部説明用の文章はシンプルにし、詳細な議事録やマトリクスは社内用ファイルで保管。
5. まとめ
ISO 14001 の「4.3 適用範囲の決定」は、EMS の“守備範囲”を宣言する作業です。
適切に定めることで、
- 社員がどこまで取り組むか明確になる
- 審査や顧客の信頼を得やすくなる
- 重点施策を集中投下でき、ムダな管理コストを削減できる
――といった効果が期待できます。まずは 「何をコントロールできるか」 という観点で棚卸しし、外部にも説明できるシンプルな文章に落とし込みましょう。
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