ISO14001「著しい環境側面」の見つけ方と対応方法とは?~ISO14001コンサルタントの視点による~
環境マネジメントシステム(EMS)に取り組む中で、「著しい環境側面」という言葉に悩まされた経験はありませんか?
「どうやって見つけるの?」「判断の基準は?」「見つけたら何をすればいいの?」
今回は、そんな疑問にお答えする形で、ISO14001における著しい環境側面の見つけ方と対応方法について、わかりやすく解説します。
■ 「環境側面」とは何か?
まず、「環境側面」とは、組織の活動・製品・サービスが環境に与える影響の原因となる要素のことです。
たとえば:
- 工場のボイラーから排出される煙(→ 大気汚染)
- 使用済みの溶剤や切削油(→ 水質汚染のリスク)
- エネルギーの消費(→ 資源枯渇・CO₂排出)
これらの中で、環境への影響が大きく、組織として重要と判断したものが「著しい環境側面」とされます。
■ 著しい環境側面の見つけ方(特定の手順)
ステップ1:活動の棚卸し
まずは、自社の活動・製品・サービスを洗い出しましょう。
製造、物流、事務、メンテナンスなど、日々の業務を細かく棚卸しすることがスタートです。
ステップ2:環境への影響をリストアップ
それぞれの活動が環境にどんな影響を及ぼすかを洗い出します。
例えば:
- 使用する化学物質は土壌や水質に悪影響を与えるかもしれない
- 騒音が近隣住民に迷惑をかけるかもしれない
ステップ3:評価軸を決めて重要性を判定
次に、どの側面が「著しい」と言えるのか、評価基準を定めて点数化や優先度付けを行います。よく使われる評価軸には次のようなものがあります:
- 法的規制や順守義務があるか?
- 周辺環境や利害関係者への影響は大きいか?
- 頻度や発生の可能性は高いか?
- 緊急時のリスクは高いか?
この評価結果から、基準を超えたものを「著しい環境側面」として特定します。
■ 対応方法:どう管理し、改善するか?
著しい環境側面が明確になったら、それに対して以下のような対応が求められます。
① 環境目標の設定(ISO14001 6.2)
たとえば、
- 「電力使用量を前年比10%削減」
- 「VOC排出量を月間5%削減」など
数値目標を設定し、改善への方向性を明確にします。
② 管理策の導入と運用
ルールや手順を整備し、必要な設備投資や改善を行います。
例:
- 廃液を適切に保管し、漏洩防止の二重容器を導入
- 有害物質の取扱い手順をマニュアル化し、作業員に教育
③ 教育・訓練
現場スタッフが環境側面の重要性を理解し、日常的に意識して対応できるように教育を実施します。
④ モニタリング・評価
設定した目標の進捗を定期的に確認し、効果が出ているかをチェック。必要に応じて見直しや改善を行います。
■ 事例:金属加工業のケース
ある金属加工業A社では…
- 活動:切削加工での切削油使用
- 環境影響:切削油の廃液が排水に混入 → 水質汚染リスク
- 評価結果:法律順守が必要 + 周辺環境への影響が大きいため「著しい環境側面」と判断
対応策として:
- 廃液タンクの定期点検ルールの制定
- 作業者向けに漏洩時の応急対応マニュアルを作成
- 廃液量のモニタリング体制を構築
このように、リスクを管理しながら継続的な改善につなげています。
■ まとめ:本質は“使えるルール”づくり
「著しい環境側面」の特定や管理は、形式的な作業ではなく、組織のリスク管理や企業価値向上にもつながる本質的な活動です。
- 「洗い出し → 評価 → 対策 → 改善」のサイクルを回すこと
- 全社で環境への責任を共有すること
が、環境マネジメントを“活きた仕組み”に変えていくポイントです。
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