形骸化したISO運用をどう改善したか
形骸化したISO運用の課題
ISOの運用が形骸化し、形だけの活動になっていると感じていませんか?K社は同じような状況を改善し、業務効率化と顧客満足度向上を実現しました。そのプロセスをご紹介します。
問題の発見
K社は、製缶業を営む従業員70名ほどの会社だ。同社がISO9001を導入してから10年が経過していたが、1年前に運用の中核を担ってきた担当者A氏が退職し、混乱が広がる中、新たに任命されたB氏が一念発起。最初は戸惑いながらも、次第に改善への道を見つけ出しました。
新たに担当を任されたのは、内部監査員としての経験を持つB氏だった。彼は、「自分が会社全体のISO9001運用を理解し推進しなければならない」と決意し、まず現状把握に取り掛かった。しかし、文書や記録を調査する中で次のような課題が浮き彫りになった。
すなわち、品質マニュアルがISO規格の要求事項をそのまま記載しているだけで、運用方法との関連性が不明瞭でした。また、紙と電子ファイルが混在しており、記録を探すのに手間がかかるなどの問題もありました。そして、従業員がISO9001の目的や運用ルールを十分に理解しておらず、運用が形骸化していた。
これらの課題を目の当たりにしたB氏は、「このままではISO9001の本来の目的である継続的改善が達成できない」と痛感した。
コンサルタントとの取組み
B氏は会社の実情に合ったシンプルで効果的なISOの構築が必要だと確信し、同業他社や近隣企業に相談。最終的に、経験豊富なコンサルタントの支援を受けることを決めた。
コンサルタントとの対話を通じて、次のようにシステムの見直しが進められた。
<質問プロセス>
初めに、ISO9001の運用によりどんなことを実現したいのかを自分たちで考えさせるため、コンサルタントからの質問に答えるプロセスを通じて、会社の方向性が明確になった。コンサルタントからの質問内容は、今の品質状況で満足しているのか、顧客満足を超えて顧客のニーズと期待を引き出す必要はないのか、顧客の幅を広げなくてよいのか、従業員の待遇は今のままでよいのかなどの会社全体に関係する問いかけがあった。今まで、あまり深く考えたことが無かったが、全体的方向性を明確にしておくことの重要性を再認識することができた。
<ISOへの対応>
ISOの箇条(ISOに定められた要件)ごとにその意味するところの分かりやすい説明を聞き、その箇条に対する当社としての取り組み方を次回までの宿題として与えられ、次回その内容についての打ち合わせを行い、その結果を踏まえて、コンサルタントに品質マニュアルや必要な様式(文書や記録のフォーマット)の作成を依頼する。
<成果>
このような手順を繰り返した結果、当社オリジナルの“品質マネジメント”の仕組みが出来上がった。この作成プロセスには、ISO事務局以外に各部署のISO担当者も参加した結果、K社の幅広い部門の人たちの理解が深まり、新しい仕組みによる運用の基礎が確立され、今後の成果が楽しみである。
結果と学び
このように、コンサルタントの支援を受け、K社の品質マニュアルは一新された。従来の複雑で専門用語が多用された内容から、従業員が日常的に使う言葉を取り入れたわかりやすいものに生まれ変わった。
また、運用ルールや記録の様式も見直され、誰もが迷わず記録を残し、ルールを理解して運用できる体制が整った。これにより、従業員全員が共通の目的意識を持ち、改善に取り組む足掛かりを得ることができた。
「わかりやすい仕組みを作り、全員で運用する。」このシンプルな理念が、K社の改善を加速させた。ISO9001は単なる認証取得のためのものではなく、会社の成長や顧客満足度の向上に直結するものであることを、K社の従業員全員が改めて実感した。最初は戸惑っていた従業員も、新しい仕組みを通じて改善の手応えを感じるようになった。
現在、K社は新しい仕組みのもと、継続的な改善に向けて力強く歩みを進めている。この成功事例は、他社にとっても示唆に富むものとなるだろう。
コンサルタントとの改善プロセス
コンサルタントは、中小企業の経営者やISO担当者様を対象に、皆様が考え、行動を起こすヒントを提供させていただいています。貴社のISO9001運用に悩みを抱えていませんか?ISO9001の形骸化や従業員の意識改革に悩む方は、ぜひご相談ください。具体的なサポート事例をもとにご提案いたします。