令和グループ(ISOコンサルティング)

ISO14001:2026改訂|中小製造業がライフサイクル視点を実務でどう整理するか― やり過ぎない・無理のない考え方 ―

ISO14001-2026改訂-中小製造業がライフサイクル視点を実務でどう整理するか

 

ISO14001:2026で注目されている「ライフサイクルの視点」について、
ここまでの記事では、

  • ライフサイクルの基本的な考え方
  • 中小製造業の身近な業務への当てはめ
  • ISO14001の中での位置づけ(箇条との関係)

を整理してきました。

 

本記事では、「では実務では、どこまで考えればよいのか」という点に焦点を当て、
中小製造業がやり過ぎず、無理なく整理するための考え方
を解説します。

 

 

「ライフサイクル視点=すべてを管理する」ではない

 

まず、実務でよくある誤解を整理しておきましょう。

 

ライフサイクルの視点という言葉から、

  • 原材料調達から廃棄まで、すべてを数値化しなければならない
  • サプライヤーや顧客の環境対策まで管理対象になる
  • LCA(ライフサイクルアセスメント)を実施しなければならない

と考えてしまうケースがあります。

 

しかし、ISO14001が求めているのは「完全な管理」ではありません。
求められているのは、

自社の事業活動を、製品やサービスの一生(ライフサイクル)の流れの中で捉え、
環境影響の大きなポイントを見失わないこと

です。

 

中小製造業にとっての「現実的なスタートライン」

 

中小製造業の場合、まず考えるべきなのは次のレベルです。

  • 自社が関与している工程はどこか
  • 自社の工程で、環境負荷が発生しやすい点はどこか
  • その前後(上流・下流)で、影響が大きそうな点はあるか

 

すべてを網羅的に管理しようとする必要はありません。
**「気づくこと」「把握すること」**がスタートラインです。

 

 

実務では「自社でコントロールできる範囲」を軸に考える

 

ライフサイクル視点を実務に落とし込む際の基本軸は、
**「自社でどこまでコントロールできるか」**です。

 

① 自社で直接コントロールできる領域

例:

  • 電力・燃料の使用
  • 廃棄物の発生・分別
  • 化学物質・油類の管理
  • 騒音・排水などの現場管理

 

ここは、これまでのISO14001の環境側面管理と大きく変わりません。

 

② 影響はあるが、直接は管理できない領域

例:

  • 原材料の製造工程
  • 顧客の使用方法
  • 製品廃棄時の扱われ方

 

この領域では、「管理」ではなく
「配慮」「考慮」「情報提供」レベルで十分です。

 

 

「やり過ぎない」ための3つの実務ポイント

 

ポイント①:新しい仕組みを無理に作らない

ライフサイクル視点のために、

  • 新しい帳票
  • 新しい評価表
  • 新しい数値管理

を無理に追加する必要はありません。

 

既存の

  • 環境側面一覧
  • リスクと機会の整理
  • 目標設定や改善活動

の中で、「上流・下流の視点が入っているか」を見直すだけで十分な場合も多いです。

 

 

ポイント②:「重要そうなところ」だけを押さえる

すべての工程・すべての影響を同じ重さで扱う必要はありません。

  • 使用量が多いエネルギー
  • 廃棄量が多いもの
  • 過去にトラブルや指摘があった点

 

など、影響が大きい・関心が集まりやすいところを中心に考えます。

これは、ISO14001が従来から求めてきた「重要な環境側面」の考え方と同じです。

 

 

ポイント③:「説明できる状態」を目標にする

審査や社内説明において重要なのは、
完璧な資料よりも、筋の通った説明です。

 

例えば、

  • 「当社は製造業であり、主な環境影響は製造工程に集中している」
  • 「上流・下流については影響を認識し、情報提供などの形で配慮している」

 

と説明できれば、それは十分に「ライフサイクル視点を考慮している」と言えます。

 

 

ライフサイクル視点は「考え方の補助線」

 

ライフサイクルの視点は、
新しい義務を増やすためのものではありません。

  • 環境影響を見落とさないための補助線
  • 改善の方向性を考えるための視点
  • 将来のリスクに早めに気づくための考え方

として使うものです。

 

中小製造業にとって重要なのは、
「続けられること」「説明できること」「実態に合っていること」

やり過ぎず、無理なく、
自社なりの整理で十分に対応できます。

 

 

次の記事では…

 

次回は、
「ライフサイクル視点を、環境側面・リスクと機会・目標設定にどうつなげるか」
といった、もう一段実務に近い整理を行う予定です。

 

まずは本記事の考え方をベースに、
「自社の場合、どこまで考えれば十分か」を整理してみてください。

 

 

ライフサイクルの視点についての全体像はこちら

 

ここでは、中小製造業が無理なく取り組むための「やり過ぎない整理」の考え方を紹介しました。

ライフサイクル視点に関する他の切り口(背景・規格・関連テーマ)も含めて確認したい場合は、ハブページをご参照ください。

👉 中小製造業向け|ライフサイクル視点 実務整理ハブ(ISO14001:2026)

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    この記事を書いた人

    野田博

    早稲田大学理工学部卒。住友金属工業株式会社にて製鉄所および本社勤務を経て、関連会社の経営に携わる。ISOの分野では、JQAおよびASRにて主任審査員を歴任(現役)。JQAにおいては審査品質・実績が高く評価され、TOP5%審査員として表彰された実績を持つ。対応規格はISO9001、ISO14001。現在は中小企業を中心に、実務に即したシンプルなISO導入・運用支援を行っている。

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