ISO14001:2026で広がった「生物多様性」と「生態系の健全性」とは― 中小製造業は何をどこまで見ればよいのか ―

はじめに|なぜ新たに「生態系の健全性」という言葉が出てきたのか
ISO14001:2026(DIS)では、環境への影響を捉える視点として、
**「生物多様性 または 生態系の健全性」**という表現が用いられています。
これは単なる言い換えではなく、評価の視点が広がったことを示しています。
これまでのISO14001では、「生物多様性」という言葉から、
希少な動植物や自然保護区への影響を連想し、
「自社には関係が薄い」と感じていた中小製造業も少なくありませんでした。
しかし2026改訂では、
“生きものがどれだけいるか”だけでなく、
“環境がきちんと機能しているか”
という視点が明確に加えられています。
この「環境がきちんと機能しているか」を表す概念が、
生態系の健全性です。
「生物多様性」とは何を指すのか(従来の整理)
生物多様性とは、自然界に存在する生きものの多様さを表す概念で、
一般に次の3つのレベルで説明されます。
- 種の多様性(動植物・微生物の種類)
- 遺伝的多様性(同じ種の中の違い)
- 生態系の多様性(森林、河川、海、農地など)
ISO14001:2015までは、
「生物多様性への影響があるかどうか」を考えることが主でした。
ただし実務上は、
- 希少種がいるか分からない
- 専門知識が必要そう
といった理由から、扱いにくいテーマになりがちでした。
「生態系の健全性」とは何を意味するのか
生態系の健全性とは、
生態系が本来持っている機能や循環が、無理なく維持されている状態を指します。
具体的には、次のような視点です。
- 水質が著しく悪化していないか
- 土壌が汚染や劣化によって機能を失っていないか
- 生物の構成が極端に偏っていないか
- 人為的な影響から回復できる状態にあるか
重要なのは、
**「生きものが存在しているか」よりも
「環境として健全に機能しているか」**に着目する点です。
たとえ希少種が確認されていなくても、
排水や廃棄物、土地利用によって環境の機能が損なわれていれば、
それは生態系の健全性に影響を与えていると考えます。
両者はどう違い、どう重なっているのか
整理すると、次のように理解すると分かりやすくなります。
- 生物多様性
→ どんな生きものが、どれだけ存在しているか - 生態系の健全性
→ 環境が本来の役割を果たせているか
ISO14001:2026では、
どちらか一方だけを見るのではなく、
どちらの視点でも説明できることが求められています。
そのため規格では、
「生物多様性 または 生態系の健全性」という並列表現が用いられています。
中小製造業にとって、なぜ「生態系の健全性」が重要なのか
中小製造業の事業活動は、
次のような形で周辺環境に影響を与えています。
- 排水や雨水の流出
- 廃棄物の保管・処理
- 土地利用や敷地管理
- 騒音・振動・粉じん
これらは、
「生物多様性」という言葉では説明しにくくても、
生態系の健全性という視点であれば、実務と直結して説明しやすい内容です。
ISO14001:2026では、
「希少な生物がいるかどうか」ではなく、
事業活動が環境の状態や機能を悪化させるリスクを持っていないか
を問われるようになっています。
実務では「どこまで考えればよい」のか
生態系の健全性という言葉から、
高度な調査や専門評価を想像する必要はありません。
中小製造業に求められるのは、次のような整理です。
- 自社の活動が、周辺環境にどのような影響を与え得るか
- 悪化させる可能性がある点は何か
- 管理・対策によって抑えられているか
**重要なのは「説明できること」**であり、
完璧な評価を行うことではありません。
まとめ|ISO14001:2026で求められる理解
ISO14001:2026では、
生物多様性という“生きもの中心の視点”に加えて、
**生態系の健全性という“環境の状態・機能を見る視点”**が明確になりました。
これは中小製造業にとって、
むしろ実務に近づいた考え方とも言えます。
次の展開(予告文としてそのまま使用可)
次回は、「生態系の健全性」をISO14001の中で
どこで、どのように評価・説明すればよいのかを、
中小製造業の実務に沿って整理します。
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