判断に迷う瞬間|10章「改善」はどう変わる?― 是正措置と継続的改善の整理で何を見直すべきか ―

ISO14001:2026(DIS)では、10章「改善」の構成が整理されました。
2015年版では以下の構成でした。
- 10.1 一般
- 10.2 不適合及び是正処置
- 10.3 継続的改善
これに対し、2026 DISでは次のように変更されています。
- 10.1 不適合及び是正措置(旧10.2が繰上げ)
- 10.2 継続的改善(旧10.3が繰上げ)
つまり、旧10.1「一般」が削除され、構成が整理された形です。
大きな新要求が追加されたというよりも、「改善の位置づけ」を明確にした改訂と理解すると実務判断がしやすくなります。
■ ここで迷いやすいポイント
実務担当者からよく聞く疑問は次のようなものです。
- 是正措置の考え方は変わったのか?
- 改善活動の運用を見直す必要があるのか?
- 旧10.1が無くなった意味は?
- マネジメントレビューとの関係は変わるのか?
結論から言うと、運用を大きく変える必要は通常ありません。
ただし、「改善をどう位置づけるか」という視点は見直しておく価値があります。
■ 今回の改訂の意図をどう読むか
今回の整理は、EMS全体の流れを分かりやすくする意図があると考えられます。
特に重要なのは次の流れです。
9章(パフォーマンス評価) → 10章(改善)
つまり、
- 評価して終わりではなく
- 改善につなげる
というマネジメントの基本サイクルを、より明確に示した構造といえます。
また、2026改訂で重視されている「環境状態」の考え方とも整合し、改善活動を単発ではなく、環境課題との関係で捉える流れになっています。
■ 実務判断①
是正措置の運用自体は大きく変えなくてよい
旧10.2の要求事項がそのまま10.1に移動した形ですので、
- 不適合の原因分析
- 再発防止
- 有効性確認
といった基本的な流れは変わりません。
ただし今後は、
- リスク及び機会との関連整理
- 環境状態との関係整理
を意識しておくと、審査でも説明しやすくなります。
■ 実務判断②
継続的改善は「活動」より「仕組み」で見る
中小企業では、
- 省エネ活動
- 廃棄物削減活動
- コスト削減活動
などを「改善」として整理しているケースが多く見られます。
もちろん重要な取組みですが、ISOの意図としては、
EMS全体が改善を生み出す仕組みになっているか
が問われます。
例えば:
- 目標管理と運用管理が連動しているか
- 評価結果が改善テーマに反映されているか
- 経営判断に活かされているか
といった視点です。
■ 実務判断③
マネジメントレビューとの連動を意識する
今回の構成整理を踏まえると、
9.3 マネジメントレビュー → 10章 改善
のつながりがより重要になります。
具体的には:
- 改善テーマの優先順位付け
- 資源配分の判断
- 中長期環境課題との整合
などをレビューで扱えているかがポイントになります。
形式的な報告だけでは、改善とのつながりが弱く見えてしまう場合があります。
■ 参考情報:中小製造業でよく見られる例
以下は実務でよく見かける状態です。
- よくある状態
- 是正措置=クレーム・トラブル対応中心
- 改善=省エネ・コスト削減活動のみ
- 記録はあるが改善の流れが見えにくい
- 改訂を機に見直したいポイント
- 改善テーマの見える化
- 環境状態との関連整理
- 部門横断の改善活動促進
これだけでもEMSの実効性は大きく変わります。
■ 審査で見られやすいポイント
審査現場の感覚として、次の点は特に確認されやすくなっています。
- 改善が単発で終わっていないか
- 評価結果と改善がつながっているか
- 経営層が改善に関与しているか
逆に言えば、
形式的な改善記録だけでは評価されにくくなっている
という流れがあります。
■ まとめ
今回の改訂は、改善要求そのものが大きく変わったわけではありません。
しかし、「改善の位置づけ」は整理されました。
この機会に次の点を確認してみてください。
- 評価結果は改善につながっているか
- 改善はEMS全体の仕組みとして機能しているか
- 経営判断と結びついているか
それだけでも、EMSの実効性は一段高まります。
■ 「判断に迷う瞬間」シリーズについて
本シリーズでは、ISO14001:2026改訂内容を
実務判断の視点で分かりやすく整理しています。
他の条項解説もぜひ参考にしてください。
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