令和グループ(ISOコンサルティング)

“8.4-外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理“のポイント、発生しやすいミス及びその対応方法

 

ISO9001の箇条8.4「外部提供プロセス、製品およびサービスの管理」は、組織が外部から調達する要素に対して、内部の品質マネジメントシステムと同等の管理を行い、規定された要求事項を満たすことを保証するための枠組みを提供しています。以下に主要なポイントを示します。

 

 

“8.4-外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理“のポイント

 

  • 目的と適用範囲
    外部提供者(サプライヤー)から調達されるプロセス、製品、サービスについて、組織がその品質や適合性を確保するための基準や方法を定め、管理することが求められます。これには、アウトソーシングやサプライチェーン全体が含まれます。

 

  • 供給者の評価と選定
    サプライヤーの選定、評価、再評価を通じて、信頼性や能力、リスク評価を実施し、必要に応じた改善措置を講じる体制を整える必要があります。これにより、外部から提供される要素が、組織の品質要求を継続的に満たすことが期待されます。

 

 

  • 要求事項の明確化とコミュニケーション
    調達するプロセスや製品、サービスに対しては、仕様や要求事項が明確に文書化され、供給者と十分なコミュニケーションが図られることが重要です。これにより、誤解や不適合の発生を防ぎます。

 

  • 監視と評価
    外部提供物については、受入れ検査、試験、またはパフォーマンス評価などを通じて、実際の適合性が確認される仕組みが求められます。万が一の不適合が発見された場合は、原因究明と是正措置が実施されます。

 

  • 記録と文書管理
    外部提供者の評価結果や監視記録、要求事項の伝達履歴など、関連する情報を適切に記録・管理することが義務付けられています。これにより、追跡性が確保され、品質問題の再発防止に役立ちます。

 

  • リスクベースのアプローチ
    供給者との関係におけるリスクを評価し、リスクが高い場合には追加の管理策や監視を実施するなど、リスクベースのアプローチを採用することが推奨されます。

 

ISO9001の8.4節は、外部提供物の品質管理を通じて、組織全体の製品やサービスの信頼性向上を図るための重要な要素です。組織は、サプライヤーの選定、評価、監視を通じて、品質要求を確実に満たす体制を構築し、顧客満足度の向上や市場での競争力を維持・向上させることが求められます。

 

 

代表的なミスや不適合の例

 

  1. サプライヤー評価・選定の不十分さ

十分な評価基準が定められていなかったり、評価・再評価のプロセスが適切に運用されていないため、能力や信頼性の低いサプライヤーとの取引が継続される場合があります。

具体例: ある自動車部品メーカーが、コスト削減を狙い大幅に安いサプライヤーを選定したものの、過去の品質トラブルや納期遅延の実績が十分に評価されず、結果として不良部品の混入と生産ラインの停止を招きました。

 

  1. 要求事項の不明確・伝達不足

外部提供者に対する製品・サービスの仕様や品質要求が十分に文書化・明示されず、誤解や不一致が発生するリスクがあります。

具体例: 電子部品の調達において、図面や仕様書における公差や環境試験条件が曖昧なまま発注したため、サプライヤー側が誤った材料や加工方法を採用し、完成品の動作不良や信頼性低下に繋がりました。

 

  1. 監視・パフォーマンス評価の不足

提供された製品やサービスについて、定期的な検査や評価が実施されず、初期段階での不適合が見逃される可能性があります。

具体例: ソフトウェア開発を外部委託している企業が、契約時のみ評価を実施し、その後の定期的なパフォーマンスレビューやプロジェクト進捗の監視を怠った結果、納期遅延や仕様変更への対応が後手に回り、最終製品の品質が低下しました。

 

  1. 受入検査や試験の不備

外部提供物に対する受入検査や試験方法が不十分な場合、不良品がそのまま使用されるリスクが高まります。

具体例: 医療機器メーカーが外部から調達した部品の受入検査において、検査基準が曖昧だったために、微細な欠陥が見逃され、後に組み込まれた製品が臨床使用中に不具合を発生させる事態となりました。

 

  1. 記録・文書管理の不徹底

サプライヤー評価結果、受入検査記録、コミュニケーション記録などの管理が甘いと、後から問題の追跡や是正措置の効果確認が難しくなります。

具体例: 建設業界で、複数のサプライヤーから資材を調達していた際、各サプライヤーの評価記録や受入検査結果が散逸・未整備であったため、品質問題発生時に原因追及や改善措置の根拠を示すことが困難になりました。

 

  1. リスクベースのアプローチの欠如

サプライチェーン全体のリスク評価が適切に行われず、特に高リスクな外部提供物についての追加管理策が講じられないケースがあります。

具体例: グローバルに部品を調達している企業が、特定の地域に集中しているサプライヤーのリスク(例えば、自然災害や政治的不安定性)を十分に評価せず、その地域で大規模な災害が発生した際、調達先が一斉に停止し、生産全体に大きな影響を及ぼしました。

 

  1. 不適合品に対する是正措置の不十分さ

外部提供物に不適合が見つかった場合、原因究明や是正措置が迅速かつ効果的に実施されず、同様の問題が再発する恐れがあります。

具体例: 消費財メーカーが、外部から納入されたパッケージの一部に不適合(印刷ミスやサイズ不一致)が見つかった際、原因分析やサプライヤーへのフィードバック、改善要求が遅れ、同じ不適合が次回以降のロットでも再発し、顧客クレームの増加に繋がりました。

 

これらの点に留意し、適切な評価・監視・記録管理を実施することが、ISO9001の要求事項を満たし、品質マネジメントシステムの有効性を維持するために重要です。

 

 

代表的なミスや不適合への対策例

 

以下に、前述の不適合事例に対する代表的な対策例を示します。これらの対策は、ISO9001の要求事項に沿って、外部提供物に関するリスクを低減し、品質管理の向上を図るために有効です。

 

  1. サプライヤー評価・選定の徹底

対策:

    • サプライヤーの評価基準を明確化し、過去の実績、品質データ、納期実績などを定量的に評価する。
    • 定期的な再評価を実施し、パフォーマンスの改善・悪化を継続的に監視する。
    • リスク評価の結果を踏まえ、重要度に応じた選定・契約条件の見直しを行う。

 

  1. 要求事項の明確化と伝達の強化

対策:

    • 製品やサービスの仕様、品質基準、検査基準を文書化し、サプライヤーに対して明確かつ一貫した情報を提供する。
    • コミュニケーションルートを確立し、定期的な打ち合わせや情報共有を行う。
    • 不明確な点がないよう、契約書や注文書に詳細な技術要求や試験条件を記載する。

 

  1. 監視・パフォーマンス評価体制の強化

対策:

    • 納入後の製品やサービスに対して、定期的な検査・評価(例えば、サンプル検査や定期レビュー)を実施する。
    • 評価結果をフィードバックし、サプライヤーに改善要求や追加の監視策を導入する。
    • KPI(重要業績評価指標)を設定し、外部提供物の品質や納期、コストパフォーマンスを定量的にモニタリングする。

 

  1. 受入検査・試験プロセスの整備

対策:

    • 受入検査手順や試験方法を標準化し、明確な検査基準を設定する。
    • 検査担当者の教育・訓練を徹底し、微細な不良品も見逃さない体制を整える。
    • 検査結果を記録し、トレンド分析を行うことで、初期段階での不適合を早期に発見できる仕組みを構築する。

 

  1. 記録・文書管理の徹底

対策:

    • サプライヤー評価、受入検査、監視結果、改善履歴などの関連記録を一元管理できるシステムを導入する。
    • 文書管理のルールや保管期間を明確にし、関係者が必要な情報に迅速にアクセスできるようにする。
    • 内部監査を定期的に実施し、記録の整合性や完全性を確認する。

 

  1. リスクベースのアプローチの導入

対策:

    • サプライチェーン全体のリスク評価を実施し、各サプライヤーや地域のリスク要因を洗い出す。
    • 高リスクと判断された外部提供物については、追加の管理策(例:多元化、在庫の確保、代替サプライヤーの確保)を講じる。
    • リスク管理の見直しを定期的に行い、外部環境の変化に応じた対策を更新する。

 

  1. 不適合品への迅速かつ効果的な是正措置

対策:

    • 不適合が発生した場合は、速やかに原因分析を実施し、再発防止策を策定する。
    • サプライヤーへのフィードバックループを構築し、問題発生時の連絡・改善依頼のプロセスを明確化する。
    • 是正措置の効果を定期的に評価し、改善策が持続的に実施されているかをモニタリングする。

 

これらの対策を実施することで、ISO9001の8.4節に基づく外部提供物の管理体制が強化され、品質リスクを最小限に抑えるとともに、顧客満足度の向上と組織全体の競争力向上に繋がります。

 

 

全方位の品質管理で市場優位性を実現!ISO9001 箇条8.4が切り拓く外部提供物管理の革新

 

ISO9001の8.4節に基づく外部提供物の管理は、サプライヤーの選定から評価、要求事項の明確化、受入検査、記録管理、リスク評価、そして迅速な是正措置まで、多角的な対策が求められる重要な要素です。これらの具体例と対策を踏まえると、組織全体の品質確保と顧客満足向上、ひいては市場での競争力の維持・強化には、各プロセスの徹底的な管理と継続的な改善が不可欠であることが明らかです。

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