4.3 品質/環境マネジメントシステムの適用範囲の決定
“4.3 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定”とはどんな内容でしょうか?”4.3 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定”では、組織が品質マネジメントシステム(QMS)をどの範囲で適用するのかを明確に定めることを求めています。
これにより、QMSの適用が適切であり、組織の製品やサービス、業務プロセス、関係するステークホルダーに合致するようになります。
適用範囲を決定する際の考慮事項
組織は、適用範囲を決めるにあたり、以下の要素を考慮する必要があります。
① 外部および内部の課題
- 外部要因(市場環境、競争状況、法律・規制要求事項など)
- 内部要因(組織の戦略、リソース、能力など)
② 利害関係者の要求事項
- 顧客、規制機関、サプライヤー、従業員などの期待や要望
- 業界の規制・基準への適合性
③ 提供する製品・サービス
- どの製品・サービスがQMSの範囲に含まれるのか
- 組織の業務範囲との整合性
④ 組織の活動場所(適用拠点)
- QMSが適用される拠点(本社、工場、支店など)
- 特定の部門やプロセスが適用範囲に含まれるか
⑤ ISO 9001の要求事項の適用性
- 標準の要求事項の中で、組織の業務に適用できないものがある場合、その理由を明確にしなければならない(例:設計・開発を行っていない場合、8.3「設計・開発」要求事項を除外)
適用範囲の文書化
ISO 9001では、適用範囲を明文化し、維持することを求めています(記録として残すことが必須)。
文書化する内容の例
- 組織のQMSの適用範囲(例:「当社は自動車部品の製造と販売に関するQMSを適用する」)
- 適用する拠点、部門、活動
- ISO 9001要求事項の適用除外がある場合の正当な理由
適用範囲の決定が重要な理由
- 適用範囲が明確でないと、QMSの有効性が低下する
- 監査時に、適用範囲の妥当性を確認される
- 顧客や認証機関に対して、品質管理の適用範囲を明確に説明できる
- 組織の業務とISO 9001の適合性を正しく評価できる
具体例
例① 製造業の場合の適用範囲:
「当社のQMSは、自動車用金属部品の設計、製造、販売に適用する。本社および生産拠点(A工場、B工場)が適用範囲であり、購買および物流プロセスも含まれる。」
例② サービス業の場合の適用範囲:
「当社のQMSは、国内および海外の法人向けITサポートサービスの提供に適用する。適用拠点は東京本社および大阪支店である。」
組織の特性に合った適用範囲の決定によるISO 9001の効果的な運用
品質マネジメントシステムの適用範囲は、組織が品質管理をどこまで適用するのかを明確にするための重要な要素です。
この範囲は、内部および外部の課題、利害関係者の要求、提供する製品やサービス、適用拠点などを考慮して決定する必要があります。
また、決定した適用範囲は文書化し、継続的に維持することが求められます。
さらに、適用除外がある場合には、その正当な理由を明確に説明できるようにしなければなりません。
適用範囲が適切でないと、品質マネジメントシステムの有効性が低下し、認証の取得やシステムの運用に支障をきたす可能性があるため、慎重に設定することが重要です。
この要件を適切に理解し、組織の特性に合った適用範囲を定めることが、ISO 9001の効果的な運用につながります。