令和グループ(ISOコンサルティング)

ISO要求事項の分かり易い解説

 

“ISO要求事項”とはどんな内容でしょうか?以下に、製缶業を前提としたISO 9001の要求事項(箇条4〜10)について、各項目の説明+実際の事例を交えて解説します。

 

 

 箇条4:組織の状況

 

製缶業を営む企業が品質マネジメントを構築するためには、まず「自社がどういう環境にあるのか」を整理することが必要です。たとえば、ある会社では、長年の溶接技術に自信を持っており、プラント向けの圧力容器を中心に受注しています。

 

このように「何を作っていて、誰に提供していて、どんな課題があるのか(例えば熟練工不足や外注先の品質ばらつきなど)」を整理することで、品質マネジメントの取り組みの方向性が定まります。

 

 

 箇条5:リーダーシップ

 

この章では、経営者が品質マネジメントにどれだけ関与しているかが問われます。例えば、ある町工場の社長は、「納期と品質の両立がうちの強みだ」と全体朝礼で毎週伝え、社員に品質方針を周知徹底しています。

 

また、社長自らが定期的に現場を巡回し、作業者とコミュニケーションをとることで、経営層の意識が現場に伝わりやすくなります。このような取り組みは、リーダーシップの実例として非常に有効です。

 

 

 箇条6:計画

 

製缶業では、製品の不良や工程の遅延が大きな損失につながるため、事前のリスクを見込んだ計画づくりが重要です。例えば、ある会社では「納期遅れのリスク」として、材料納入の遅れをリストアップし、常に代替材料の在庫を一定数確保する方針をとっています。

 

また、品質目標として「月間の再加工件数を2件以内に抑える」といった具体的な数値目標を設定し、その達成に向けて週次で進捗を確認しています。

 

 

箇条7:支援

 

高品質な製缶製品を作るには、人・モノ・情報の支援が欠かせません。例えば、TIG溶接の品質を安定させるため、作業者に対して定期的に社内技術講習を実施している会社があります。

 

また、溶接機の定期点検スケジュールを作成し、記録に残すことで、設備故障による品質不良を予防しています。

 

さらに、図面変更があった際には、古い図面をすぐに回収し、改訂履歴付きで最新図面を現場に配布する体制を整えています。これにより、情報の混乱を防ぎ、ミスを未然に防止しています。

 

 

 箇条8:運用

 

運用では、「図面通りの製品を、納期通りに、確実に納める」ための具体的な管理が求められます。たとえば、ある製缶会社では、製造工程ごとにチェックリストを用いて管理しています。
・材料受入時の寸法・材質確認
・仮付け完了時の中間検査
・溶接後の外観検査、非破壊検査(UT等)
・完成品の出荷前検査と寸法確認

 

外注先に加工や塗装を依頼する場合も、外注先の検査記録を確認し、必要であれば立会検査を行います。これらを計画通りに行うことで、安定した品質を保っています。

 

 

箇条9:パフォーマンス評価

 

この章では、「自社の取り組みが本当に効果を上げているのか」を数値や事実で確認します。例えば、納品後のクレーム件数、不良再加工の件数、工程内不良の傾向などを毎月集計・分析している会社があります。

 

ある月に「フランジ取り付け位置のミス」が連続して発生したケースでは、工程を見直し、「仮付け前に立ち会い確認を行う」ルールを追加することで再発防止につなげました。こうした改善のきっかけを得るには、定期的なパフォーマンス評価が欠かせません。

 

 

 箇条10:改善

 

問題が発生したとき、表面的な対処だけで終わらせず、「なぜ起きたのか」を深掘りして再発防止を図るのがこの章の趣旨です。

 

たとえば、寸法ミスが繰り返し発生していた会社では、「図面の一部が見にくいFAXコピーで作業されていた」ことが原因でした。そこで、図面はPDFで印刷・管理し、現場にはA3サイズで支給するよう変更したところ、不良が激減しました。

 

こうした「現場に寄り添った改善」は、日常業務の中で自然に品質を向上させていくことにつながります。

 

 

“モノづくりの裏側”を支える品質マネジメントのしくみ

 

ISO 9001は「品質を保証する仕組み」をつくるためのルールブックです。製缶業では、図面通り・納期通り・確かな溶接品質が要求される中で、属人的な技術や現場の勘に頼りすぎない「しくみ化」が求められます。

 

本稿では、箇条4から箇条10までの要求事項を、製缶業の現場に合わせて解説してきました。

 

それぞれの章がバラバラに存在しているのではなく、すべてが連携して「品質」を支える仕組みを作っています。

 

以下がそのポイントです:

 

視点

主な要点

箇条4

自社を知る

業務内容・関係者・課題(内部・外部)を整理

箇条5

想いを示す

トップが方針を示し、現場に浸透させる

箇条6

先を読む

リスクと目標を見据えて行動を計画

箇条7

支える力

人・設備・情報の支援体制を整備

箇条8

日々を管理

製造・検査・外注など、現場運用を安定化

箇条9

結果を測る

数値や事実で成果を評価し、改善に活かす

箇条10

未来に活かす

問題をチャンスに変えて、より良くする

 

 

製缶業の現場では、目の前の加工・溶接・検査に集中しがちですが、品質を守る本当の力は“仕組みの積み重ね”にあります。

 

ISOの要求事項はその基盤をつくるための道しるべ。現場に寄り添った形で取り入れていくことで、品質の安定と継続的な改善が実現できます。

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