令和グループ(ISOコンサルティング)

ISOコンサルタントの視点による”5.1 リーダーシップ及びコミットメント”

 

”5.1 リーダーシップ及びコミットメント”で実施する必要があるのはどんな内容ですか?その内容につき概要を解説します。

 

 

”5.1 リーダーシップ及びコミットメント”の概要

 

「5.1 リーダーシップ及びコミットメント」は、組織のトップマネジメントが品質や業務改善、そして組織全体のパフォーマンス向上に対して果たすべき役割と責任を明確に示す項目です。以下はその概要です。

 

主要ポイント

  • トップマネジメントの役割:
    組織の最上位層が、自らの行動を通じて品質や持続的な改善に対するコミットメントを示す必要があります。リーダーシップは、企業文化の根幹となり、全従業員に対して目標や方向性を明確に伝える役割を果たします。

 

  • 戦略的方向性の確立:
    トップマネジメントは、組織のビジョン、ミッション、そして戦略的な目標を設定し、それを全社的に共有・浸透させる責任があります。これにより、各部署や従業員が一丸となって組織目標の達成に向けて取り組む基盤が整います。

 

  • 品質マネジメントシステムの推進:
    品質管理やプロセス改善の取り組みをリードし、適切なリソース配分、リスクマネジメント、内部コミュニケーションの促進など、システム全体の効果的な運用を確保します。

 

  • 従業員のエンゲージメントと育成:
    従業員が自らの役割を十分に理解し、積極的に改善活動に参加できるよう、モチベーションの向上や教育・訓練を支援する環境づくりが求められます。

 

  • 持続的改善の推進:
    組織全体で現状を評価し、改善のためのフィードバックループを確立することで、業務プロセスの効率化や顧客満足度の向上を継続的に実現します。

 

「5.1 リーダーシップ及びコミットメント」は、単にトップダウンの指示を行うだけでなく、組織全体における文化や風土の形成、従業員の意識改革、さらには戦略的な経営の実現に直結する重要な要素です。トップマネジメントが率先してこれらの姿勢を体現することで、組織全体が一丸となって高いパフォーマンスと品質の向上を目指す体制が築かれます。

 

 

 

説明責任とは

 

説明責任(accountability)とは、自己の決定・行動に責任を持ち、問われたときに説明できることです。

 

トップマネジメントは品質/環境マネジメントシステムで何を計画し、その結果がどうなっているかの説明が求められることになります。

 

品質/環境マネジメントシステムの意図した結果として、①品質/環境目標の達成状況や②顧客満足度の向上状況、➂汚染の予防や④その他の環境問題への対処、⑤順守義務を満たすこと、⑥品質/環境マネジメントシステムの継続的改善、⑦そして未達の恐れのある場合の対応策などを把握し、説明できることが必要です。

 

5.1で求められている事項について、必ずしもトップ自らが実行しなくても、その責任(responsibility)を他の関連する経営幹部などに委託することもできます。責任を丸投げにして後は知らないということではなく、委託した事項が確実に実行されていることを確認し、最終的責任を持つとともに、トップ自らが第三者へ説明できることが必要です(説明責任を果たす)。

 

 

確実にするとは

 

規格要求事項“b) c) e)”には「確実にする」とあります。

ISO14001:2015 付属書A.3(概念の明確化) : “確実にする”及び“確保する”(ensure)という言葉は,責任を委譲することができるが,説明責任 については委譲できないことを意味しています。

 

 

リーダーシップとは

 

「h) 人々を積極的に参加させ(QMS),指揮し,支援する」、「J) 管理層の役割を支援する」とあるように、リダーがすべて一人で決めて実行するのではなく、組織の人々を積極的に事業推進に参加させ、組織の総力を高めてゆくようなリーダーシップの必要性を示唆しています。

 

 

事業プロセスへの統合とは

 

品質/環境マネジメントシステムは経営ツールの一つであり、日常の事業経営の中で活用されてこそ効果を発揮するものです。

 

形式的で内容の薄い、また組織に二重の仕組みを構築することは避ける必要があります。

 

組織の製品及びサービスを通して顧客へ価値を提供するための一連の活動に要求事項が反映されることにより、要求事項が顧客価値創造の過程で有効に機能し、組織の事業目標を達成することが重要で、顧客価値創造による適正利潤の追求からかけ離れた品質/環境マネジメントシステムや、その仕組みの構築そのものが目的になるという形骸化した運用は避けなければなりません。

 

事業プロセスを主体とし、事業プロセスを推進する仕組みに中に、規格の要求事項が漏れなく含まれていれば良いと考えられます。規格の要求事項への適合を示すためにだけ文書化した情報を作成する事は、事業プロセスへ統合されている状態とは対極にあります。

 

事業とは独立してしまっている品質/環境マネジメントシステム、及び品質/環境マネジメントシステムの計画・運用そのものが目的になるような形骸化した適用を防止する狙いがあります。

 

すなわち、規格の要求事項などを日常の業務に入れ込むことでQMS/EMSの形骸化を防ぐことを求めています。

 

すなわち、品質・環境マネジメントシステムの要求事項は、組織の本業や実際の活動の中で実現できるようにすることです。

 

組織の実際の活動の中で規格要求事項がどのように実現されているかが重要です。

 

「実務とISOのシステムの乖離」や「ダブルスタンダード」とならないようにすることが大切です。

 

 

顧客重視とは

 

品質マネジメントシステムの根幹は顧客重視にあります。

 

トップマネジメントがリーダーシップ及びコミットメントを発揮するべき事項が多くある中でとりわけ顧客重視が重要です。

 

顧客重視に関して重要なのは、

  • 顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項への適合
  • 製品及びサービスの適合並びに顧客満足を向上させる能力に影響を与え得るリスク及び機会の決定・取組み
  • 顧客満足向上の重視

 

リスクに基づく考え方とは

 

トップマネジメントは、プロセスアプローチ及びリスクに基づく考え方の利用を促進することが重要です。

 

リスクに基づく考え方は,有効な品質/環境マネジメントシステムを達成するために必須です。

 

リスクに基づく考え方の概念は,例えば,起こり得る不適合を除去するための予防処置を実施する,発生したあらゆる不適合を分析する,及び不適合の影響に対して適切な,再発防止のための取組みを行うということを含めて,この規格の旧版に含まれていました。

 

組織は,この規格の要求事項に適合するために,リスク及び機会への取組みを計画し,実施する必要があります。リスク及び機会の双方への取組みによって,品質/環境マネジメントシステムの有効性の向上,改善された結果の達成,及び好ましくない影響の防止のための基礎を確立する事が出来ます。

 

リスクについては、「6.1 リスク及び機会への取組み」に記載します。

 

 

トップマネジメントの情熱が切り拓く、品質マネジメント革新の未来

 

品質マネジメントシステムの意図した結果を達成するためには、トップマネジメントの具体的な支援、関与、そしてコミットメントが重要です。すなわち、トップマネジメント自身がマネジメントシステムに関与し、先頭に立って推進することが、その運用を効果的にするために必要不可欠です。

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