6.1 リスク及び機会への取組み
“6.1 リスク及び機会への取組み”ではどんなことが要求されているのでしょうか。「6.1 リスク及び機会への取組み」では、企業が直面するリスクと、それに伴い生じる機会の双方に対して、体系的かつ戦略的に取り組む姿勢が示されています。主なポイントは以下の通りです。
“6.1 リスク及び機会への取組み”の主なポイント
- リスクの特定と評価
内部外部の環境変化や経済的、技術的、法的な要因を踏まえ、潜在的なリスクを洗い出し、その影響度や発生可能性を評価します。
- リスク対策の策定と実行
識別されたリスクに対して、回避、軽減、移転、受容などの具体的な対策を計画し、実施することで企業の安定性と持続的成長を支えます。
- 機会の捉え方と戦略的活用
同時に、リスク管理のプロセスを通じて新たなビジネスチャンスや市場の変化を機会として捉え、これらを戦略に組み込むことで、競争力の向上を図ります。
- 継続的なモニタリングと改善
定期的なリスク評価や対策の見直しを行い、環境変化に柔軟に対応できる体制を整えています。これにより、リスクと機会の双方に対する対応が常に最新の状況に即したものとなるよう努めています。
このように、リスク及び機会への取組みは、単なるリスク回避だけでなく、企業価値の向上と成長戦略の一環として位置付けられています。
リスクとは
リスクは不確かさの影響と定義(ISO9000)されている。まだ起きていないが将来起きる可能性を意味しています。
リスクに基づく考え方により、マネジメントシステムの脆弱性を排除することで、望ましくない影響の予防又は削減について、不適合の発生を機に対応する受け身ではなく、先取りをすることができるようになります。(ISO9001:2008では、予防処置は潜在する不適合の原因を取り除くための独立した箇条であったが、ISO9001:2015ではリスクに基づくアプローチに置き換えられています)。
機会とは
機会は既に明らかになっている事柄について、目的を達成するのに有利な状況であり、事態を意味しています。
例えば、機会とは目的を達成するのによい状況、時期であり、例えば、規制緩和による市場の拡大などが考えられます。
リスク及び機会の決定
組織の品質マネジメントシステムは、ビジネス環境の影響を大きく受けます。
特に、日々変化する組織の状況や利害関係者との関係から生じる不確定な要因が、結果に影響します。
そのため、リスクや機会の決定にあたっては、以下の2点に着目します。
- 簡条6.1.1では、不適合や機会を列挙する際、簡条4.1で示した組織の状況と、簡条4.2で示した利害関係者を考慮する点です。
- a)意図した結果の達成の確信、b)望ましい影響の増大、c)望ましくない影響の防止または低減、d)改善の達成に関するリスクや機会を列挙する点です。
これにより、ただ漫然とリスクや機会を挙げるのではなく、ビジネス環境に応じた視点から効果的に列挙することが可能となります。
組織の性質に応じて具体的な列挙方法は異なりますが、不確実性を解消するための重要な能力といえます。
リスク及び機会への取組み
組織の品質マネジメントシステムは、単独で機能するのではなく、組織の外部及び内部の状況に影響を受けている。
- 組織は、発生した問題や不具合に対してその原因を明確にし、それに対策を取り、問題や不適合の再発を防止している(旧版)。
- 更に、組織の外部及び内部の状況により起こりうる問題や不具合を列挙し、それらにあらかじめ対策をとり、問題や不具合の発生を未然の防止することが重要である。その結果、品質マネジメントシステムの有効性の向上、改善された結果の達成、そして好ましくない影響の防止のための基礎を確立することができる(旧版の予防処置の概念を含む)。
4.4では、決定したリスク及び機会へ取り組むのに必要なプロセスを決定し、それらに取り組むためのプロセスを決定することを求めている。
リスク及び機会への取組みの総括
本章では、リスクと機会を的確に捉え、管理するための取り組みについて詳述しました。
リスク管理は単なる回避策ではなく、将来の成長機会を発見し活かすための基盤であると位置付け、内部統制の強化や迅速な対応体制の整備を進めています。
また、変化する市場環境や不確実性に柔軟に対応することで、潜在的なチャンスを最大限に活用し、持続可能な発展と企業価値の向上を目指す取り組みを推進しています。
これらの戦略的アプローチを通じて、企業全体が一丸となり、未来への挑戦に対して確固たる基盤を築いていると言えるでしょう。