令和グループ(ISOコンサルティング)

【ISO9001・ISO14001:2026(DIS)改訂ポイント解説】-DISとは何か?中小企業が今理解すべき変更点と実務への影響

【ISO9001・ISO14001:2026(DIS)改訂ポイント解説】-DISとは何か?中小企業が今理解すべき変更点と実務への影響

 

 

2026年に予定されている ISO9001・ISO14001の規格改訂 は、すでに「DIS(Draft International Standard)」という段階に進んでいます。
この DIS は、単なる途中案ではなく、今後のISO規格の“完成形がほぼ見える段階” と位置づけられる重要な文書です。

本記事では、

  • DISとは何か
  • ISO規格改訂プロセスの中でのDISの意味
  • 中小企業がDIS段階で理解・対応しておくべき実務ポイント

を、ISO担当者・経営層の方にも分かりやすく解説します。

 

 

1. DISとは何か?(Draft International Standard)

 

DISとは Draft International Standard(国際規格案) の略称で、
ISO規格が正式発行される前に公開される「ほぼ完成版に近い規格案」です。

 

ISO規格は、次のような段階を経て策定されます。

  1. WD(Working Draft:作業原案)
  2. CD(Committee Draft:委員会原案)
  3. DIS(Draft International Standard:国際規格案)
  4. FDIS(Final Draft International Standard:最終国際規格案)
  5. 国際規格として正式発行

 

DISは、この中で 3番目の段階 にあたり、
技術的な方向性・要求事項の構造・考え方がほぼ固まった状態と考えて差し支えありません。

 

 

2. なぜDIS段階が「中小企業にとって重要」なのか

 

「DISはあくまで案なのだから、正式発行を待てばよい」と思われがちですが、
実務上はそうではありません。

 

DIS段階が重要な理由

  • 今後の審査・指導の前提となる考え方が、すでにDISに反映されている
  • 審査機関やコンサルタントは、DISを前提に情報提供を始めている
  • FDISで大枠が変わる可能性は低く、修正は表現・整理レベルが中心

 

つまりDISは、
👉 「将来のISO規格を先取りして準備できる、最も実務的なタイミング」
と言えます。

 

 

3. ただし、DISは「最終版ではない」点に注意

 

重要な注意点として、DISはまだ最終版ではありません。

  • 要求事項の表現
  • 用語の定義
  • 見出し構成や注記

などは、FDIS段階で微調整される可能性があります。

 

そのため、DIS段階で必要なのは
❌ 文言を一字一句そのまま社内文書に落とし込むこと
ではなく、
方向性・考え方・求められるレベル感を理解し、準備を始めること
です。

 

 

4. ISO9001・ISO14001に共通するDISの改訂の方向性

 

DISから読み取れる、ISO9001・ISO14001に共通する大きな方向性は次の通りです。

 

① 外部環境の変化を前提にしたマネジメント

  • 市場環境、社会的要請、気候変動など
  • 組織を取り巻く外部環境を「前提条件」として捉える考え方が強化

 

② 形式的な文書より「実効性」

  • 文書があるかどうかより、実際に機能しているか
  • 形だけの仕組みは評価されにくくなる傾向

 

③ 経営とマネジメントシステムの一体化

  • 現場任せ・ISO担当者任せでは不十分
  • 経営判断・経営課題との結びつきがより重視される

 

 

5. ISO9001:2026(DIS)の主な特徴(概要)

 

ISO9001のDISでは、次のような点がより明確に示されています。

  • 品質マネジメントを「組織文化」として根付かせる視点
  • 倫理的行動・コンプライアンス意識の重視
  • リスク及び機会の捉え方の拡張(品質リスクだけでなく事業リスクも含む)

 

品質マネジメントを「ルール」ではなく、
経営の意思決定を支える仕組みとして活用することが求められています。

 

 

6. ISO14001:2026(DIS)の主な特徴(概要)

 

ISO14001のDISで特に重要なのが 気候変動への対応 です。

  • 気候変動が「考慮事項」ではなく、前提条件として位置づけられている
  • 環境リスク・機会の中に、気候変動が明確に含まれる
  • サプライチェーン全体への影響も意識した対応が求められる

 

ISO14001は、
👉 環境管理から、経営リスク管理の仕組みへ進化している
と捉えると理解しやすいでしょう。

 

 

7. 中小企業がDIS段階で今からやるべきこと

 

DIS段階で、中小企業が取り組むべき実務は次の3点です。

 

 

① 現行のISO運用の棚卸し

  • 形だけのルール・記録になって
  • いないか
  • 実際の業務や経営判断と結びついているか

 

② 気候変動・外部環境を経営課題として整理

  • 自社にとってのリスク・機会は何か
  • 事業継続・顧客要求への影響はあるか

 

③ 改訂テーマごとの情報収集と準備

  • 気候変動
  • リスク・機会
  • 組織の状況・利害関係者

テーマ別に、段階的に理解を深めていくことが重要です。

 

 

8. まとめ|DISは「準備開始の合図」

 

DISは、
「まだ案だから様子を見る段階」ではなく、
「今後のISO対応を具体的に考え始める合図」

です。

 

中小企業にとって重要なのは、

  • DISの文言を暗記すること
  • 完璧な対応を今すぐ作ること

ではありません。

 

改訂の方向性を理解し、自社の実務にどう影響するかを考え始めること
これこそが、DIS段階で求められる最も重要な対応です。

 

 

👉 次回以降の記事では、
ISO9001・ISO14001それぞれのDIS改訂ポイントをテーマ別に詳しく解説していきます。
規格改訂情報の全体像は、ハブページから体系的に確認してください。

 

 

お気軽にお問い合わせください。

★お問い合わせ

ISO(9001/14001)一日診断、認証取得のコンサルタント、現状のシステムの見直しと改善、内部監査教育や支援、ご質問などお気軽にお問合せ下さい。貴社のニーズに合う最善のご提案とサポートをご提供いたします。

    は必須項目です。必ずご記入ください。

    会社名

    お名前

    ふりがな

    メールアドレス

    ご住所


    お電話番号

    お問合せ内容

    個人情報の取り扱い

    個人情報保護方針に同意し、送信する

    この記事を書いた人

    野田博

    早稲田大学理工学部卒。住友金属工業株式会社にて製鉄所および本社勤務を経て、関連会社の経営に携わる。ISOの分野では、JQAおよびASRにて主任審査員を歴任(現役)。JQAにおいては審査品質・実績が高く評価され、TOP5%審査員として表彰された実績を持つ。対応規格はISO9001、ISO14001。現在は中小企業を中心に、実務に即したシンプルなISO導入・運用支援を行っている。

    この著者の記事一覧

    コメントは受け付けていません。

    メールフォームよりお気軽にお問い合わせください。

    お問い合わせはこちら お問い合わせはこちら arrow_right
    PAGE TOP