令和グループ(ISOコンサルティング)

判断に迷う瞬間|9.1― ISO14001:2026「監視・測定」は、どこまでやるべきか?―

判断に迷う瞬間|9.1― ISO14001:2026「監視・測定」は、どこまでやるべきか?―

 

 

はじめに|9.1で、なぜ急に数字が増え始めるのか

 

ISO14001:2026 の検討を進めていくと、
8章で運用の方向性を整理したあと、9.1「監視、測定、分析及び評価」に差し掛かったところで、
多くの組織がふと立ち止まります。

 

「これは測らなくていいのだろうか?」
「審査で聞かれたら困らないだろうか?」
「一応、数値を取っておいた方が安全では…?」

 

その結果、
気づけば 監視項目・測定項目が増え続ける という状態に陥りがちです。

 

しかし、この9.1こそが
やりすぎるEMS”と“使われるEMS”の分かれ道
になる箇条でもあります。

 

 

なぜ9.1は、こんなにも判断に迷うのか

 

9.1で迷いが生じやすい理由は、とてもシンプルです。

  • 規格の表現が抽象的で、範囲が広い
  • 「測定していない=不十分」と感じやすい
  • 過去の審査経験が、判断を保守的にする

 

特に、
6章や8章で「これは重要だ」と整理した内容ほど、

「じゃあ、これは何か数値で管理すべきでは?」

という思考に引きずられやすくなります。

 

その結果、
測れるものは測っておこう”
という発想が先行してしまうのです。

 

 

ISO14001:2026における9.1の本質

 

ここで、一度立ち止まって整理しておきたいのが、
9.1の目的は何かという点です。

 

9.1は、
「管理している感」を出すための箇条ではありません。

 

ISO14001:2026における9.1の本質は、

判断のために、必要な情報を得ること

です。

  • 状況が変化していないか
  • 想定した運用が機能しているか
  • 見直すべき兆しは出ていないか

こうした “判断材料”を得るため に、
監視や測定が位置づけられています。

 

つまり、

測定すること自体が目的ではない

という点が、最も重要な前提です。

 

 

8章で決めた内容と、9.1はどうつながるのか

 

9.1は、単独で考える箇条ではありません。

むしろ、

  • 6章で「何に取り組むか」を決め
  • 8章で「どう運用するか」を整理した結果

として、
「その運用がうまくいっているかを確認する」
位置づけにあります。

 

そのため、

  • 8.1で決めていないことを
  • 9.1で無理に測定しようとする

と、
管理がちぐはぐになってしまいます。

 

9.1は、
8章で決めた内容を“裏取り”するための箇条。
この関係を押さえておくと、迷いはかなり減ります。

 

 

よくある「迷いすぎ」パターン

 

実務でよく見かけるのが、次のような状態です。

  • 測定項目はあるが、誰も見返していない
  • 年1回だけ数値を集めて、そのまま保管
  • 「一応やっている」ことが目的化している

 

これらに共通しているのは、

測定結果が、判断に使われていない

という点です。

 

この状態になると、
EMSは「運用」ではなく「作業」になってしまいます。

 

 

迷わないための判断基準(3つの視点)

 

9.1で迷ったときは、
次の3つの視点で整理してみてください。

 

① その情報は、何かの判断に使うか

  • 見直し
  • 改善
  • 継続判断

どれにも使われないなら、
無理に測る必要はありません。

 

② 変化を捉える必要があるか

  • 状況が変わりやすいものか
  • 放置するとリスクがあるか

変化が少ないものは、
定性的な確認でも十分な場合があります。

 

③ 8章の運用と結びついているか

  • 実際の業務と連動しているか
  • 現場で理解されているか

8章と切り離された測定は、
形骸化しやすくなります。

 

 

7章を振り返ると、9.1の見え方も変わる

 

ここで少し、7章にも触れておきましょう。

9.1で「測る」と決めた瞬間、

  • 誰がやるのか
  • どうやって続けるのか
  • その力量は足りているか

といった 7.1/7.2の論点が、必ず関係してきます。

 

7章が曖昧なまま9.1を膨らませると、
後から 「回らないEMS」 になりがちです。

 

 

おわりに|9.1は「測るかどうか」を選ぶ箇条

 

9.1は、

「どこまで測るか」を競う箇条ではありません。

 

むしろ、

「何は測らなくてよいか」を判断する箇条

とも言えます。

 

この判断ができると、
EMSは一気に 軽く、使いやすくなります。

 

そして次は、

  • 9.2(内部監査)
  • 9.3(マネジメントレビュー)

という、
測った後、どう使うか”で再び迷う箇条へと続いていきます。

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    この記事を書いた人

    野田博

    早稲田大学理工学部卒。住友金属工業株式会社にて製鉄所および本社勤務を経て、関連会社の経営に携わる。ISOの分野では、JQAおよびASRにて主任審査員を歴任(現役)。JQAにおいては審査品質・実績が高く評価され、TOP5%審査員として表彰された実績を持つ。対応規格はISO9001、ISO14001。現在は中小企業を中心に、実務に即したシンプルなISO導入・運用支援を行っている。

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