ISO14001:2026規格改訂で「天然資源の利用可能性」をどう評価・分析するか― 中小製造業のための実務ステップとツール ―

ISO14001:2026の改訂議論の中で、新たに明確に意識されるようになったキーワードの一つが**「天然資源の利用可能性」**です。
一見すると抽象的で、「中小製造業には関係が薄いのでは」と感じられるかもしれません。
しかし実際には、原材料、エネルギー、水、補助資材といった日々の事業活動そのものと深く関係する考え方であり、無視できないテーマになりつつあります。
本記事では、
- 「天然資源の利用可能性」とは何を意味するのか
- ISO14001:2026でどのように評価・分析すればよいのか
- 中小製造業がやり過ぎず、実務として整理するためのステップとツール
を中心に解説します。
なぜ「評価・分析」が求められるのか
ISO14001:2026では、環境側面やリスク・機会を考える際に、
「将来にわたって利用できるか」「供給が制約される可能性はないか」
という視点がより重視されます。
これは、
- 気候変動
- 資源制約
- 地政学リスク
- サプライチェーンの不安定化
といった外部環境の変化を背景としています。
つまり「天然資源の利用可能性」は、
環境配慮のためだけでなく、事業継続の観点からも重要なテーマ
として位置づけられているのです。
評価・分析の前に押さえておきたい前提
まず重要なのは、完璧な定量評価を目指さないことです。
ISO14001が求めているのは、学術的な資源評価やLCAの完全実施ではありません。
中小製造業においては、
- 自社の事業に関係する天然資源を把握しているか
- 将来的な制約やリスクを意識しているか
- 組織として考え、対応を検討しているか
が説明できれば、十分に規格の意図を満たします。
実務ステップ①:自社で使っている「天然資源」を洗い出す
最初のステップはシンプルです。
自社の事業活動で使っている天然資源を書き出すことから始めます。
例としては、次のようなものがあります。
- 金属材料(鋼材、アルミ、銅 など)
- エネルギー(電力、都市ガス、燃料)
- 水(工業用水、上水)
- 化学物質の原料となる天然資源
- 梱包材や副資材の原材料
ここでは「重要そうなもの」だけで構いません。
細かく漏れなく洗い出す必要はありません。
実務ステップ②:利用可能性の視点で簡易評価する
次に、それぞれの資源について利用可能性の観点で簡易的に評価します。
難しく考えず、次のような問いを使います。
- 将来、入手が難しくなる可能性はあるか
- 価格変動や供給不安の影響を受けやすいか
- 代替手段(代替材料・代替工程)はあるか
評価方法は、
- 高/中/低
- 影響あり/なし
といった定性的な区分で十分です。
ここで重要なのは、「正解」を出すことではなく、
組織として考えた形跡を残すことです。
実務ステップ③:環境側面・リスクとの関係を整理する
評価した内容は、既存のEMS文書とつなげて整理します。
例えば、
- 環境側面一覧表の補足情報として整理する
- リスク・機会の検討資料に追記する
- 環境目標や取組テーマ検討時の参考情報として使う
といった形です。
ここで無理に新しい帳票を増やす必要はありません。
既存の仕組みに「視点を足す」イメージで十分です。
実務ステップ④:対応は「検討している」で止めてもよい
天然資源の利用可能性を評価した結果、
「現時点では大きな問題はない」
「注視はするが、すぐの対応は不要」
という結論になることも多いでしょう。
それでも問題ありません。
ISO14001:2026が求めているのは、
すぐに対策を打つことではなく、考え続ける仕組みです。
- 定期的に見直す
- 外部環境の変化があれば再評価する
といった姿勢が示せていれば、十分な対応といえます。
中小製造業で使いやすいツール例
実務では、次のような簡易ツールが有効です。
- Excel1枚の「天然資源一覧+簡易評価表」
- 環境側面一覧表へのコメント追記
- 環境会議の議事録への検討記録
特別なシステムや専門ツールは不要です。
説明できる資料があることが最も重要です。
まとめ:評価・分析は「難しくしない」ことが最大のポイント
「天然資源の利用可能性」は、新しい言葉であるがゆえに、
過剰に構えてしまいがちなテーマです。
しかし実務では、
- 自社に関係する資源を把握する
- 将来の制約を意識して評価する
- 既存のEMSに無理なく組み込む
この3点を押さえるだけで、十分に対応できます。
ISO14001:2026への移行準備として、
まずは一度、組織内で話題にすることから始めてみてください。
それ自体が、すでに規格の意図に沿った第一歩といえます。
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