ISO14001:2026改訂で注目される「生物多様性」を理解するために― まず押さえたい「多様性」という考え方 ―

本シリーズでは、「生物多様性」と「ISO14001:2026改訂」の関係について、
段階的に理解できるよう、全3回に分けて解説します。
生物多様性という言葉は、最近よく耳にするものの、
- そもそも何を意味しているのか
- 自社のISO14001とどう関係するのか
が分かりにくい、と感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで本シリーズでは、
- まず「多様性」とは何かという考え方の土台を整理し
- 次に、その考え方を自然界に当てはめた**「生物多様性」**を理解し
- 最後に、ISO14001:2026において生物多様性をどのように考え、実務としてどう整理すればよいか
を解説していきます。
本記事はその第1回として、
生物多様性を理解する前提となる「多様性」という概念を、
身近な事例を交えながら分かりやすく整理します。
「多様性」とは何か?
― いろいろある、だけでは足りない ―
「多様性」という言葉から、
「いろいろなモノや現象があること」を思い浮かべる方も多いでしょう。
それ自体は間違いではありませんが、
多様性の本質は、単に数が多いことではありません。
多様性とは、
異なる役割を持つものが共存し、
互いに影響し合うことで、
全体としてバランスよく機能している状態
を意味します。
ここで重要なのは、
- それぞれが役割を持っていること
- その役割が相互につながっていること
です。
身近な例①:会社組織における多様性
会社の人材構成を例に考えてみましょう。
- ベテラン社員
- 中堅社員
- 若手社員
それぞれが、異なる役割を担っています。
- ベテラン:経験や判断力
- 中堅:現場の中核、調整役
- 若手:新しい発想、将来の担い手
これらが組み合わさることで、組織は安定して機能します。
もしベテランがいなければ、判断を誤りやすくなります。
もし若手がいなければ、将来が不安定になります。
👉 どれか一つが欠けても、組織全体のバランスは崩れます。
これが「多様性がある状態」です。
身近な例②:取引先・調達の多様性
仕入先が1社しかない場合を想像してみてください。
- その仕入先にトラブルが起きる
- 価格が急に上がる
といったことが起きた瞬間、事業全体に影響が及びます。
一方で、
- 複数の仕入先がある
- 代替材料を検討している
状態であれば、変化があっても事業は継続できます。
👉 多様性とは、リスクを分散し、変化に耐える力でもあります。
自然界の分かりやすい例:ミツバチと花の関係
多様性の本質を最も分かりやすく示す例が、
ミツバチと花の関係です。
- ミツバチは、花の蜜や花粉を栄養源としています
- 花は、ミツバチなどの昆虫によって受粉することで、種を残します
この関係は、どちらか一方だけでは成り立ちません。
もしミツバチがいなくなると…
- 花は受粉できなくなります
- 種を残せず、植物は減っていきます
もし花が咲かなくなると…
- ミツバチは栄養源を失います
- 生きていけなくなります
👉 何か一つが欠けるだけで、全体のバランスが崩れます。
これは「生き物がたくさんいるから安心」という話ではなく、
それぞれが役割を持ち、相互に関係しているから成り立っている
という点が重要です。
多様性が失われると、すぐに問題が起きるのか?
多様性が失われたからといって、
すぐに大きな問題が起きるとは限りません。
しかし、
- 少しずつ機能が弱くなる
- 影響が時間差で現れる
- 元に戻しにくくなる
という特徴があります。
自然界では、
- 上流の森林が失われ
- 数年後に下流で水不足や洪水が起きる
といった形で影響が現れることもあります。
欠けること自体より、「偏ること」が問題
多様性のある状態とは、
「何一つ失われない状態」ではありません。
- 一部が減っても
- 他が補える
これが多様性の強さです。
しかし、
- 同じ役割を持つものが次々に失われる
- 特定の要素に極端に依存する
と、バランスは一気に崩れます。
👉 多様性とは、役割が分散している状態
と考えると理解しやすくなります。
この考え方が「生物多様性」につながる
ここまで見てきたように、多様性とは、
- いろいろな要素があり
- それぞれが役割を持ち
- 相互に影響し合い
- 全体として機能している状態
を意味します。
この考え方を自然界に当てはめたものが、
次回解説する 「生物多様性」 です。
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次回は、
「生物多様性とは何か?」
― 身近な事例で理解する自然界のバランスの仕組み ―
として、
今回整理した「多様性」の考え方を土台に、
生物多様性そのものを分かりやすく解説します。
シリーズ構成
- 第1回:多様性とは何か(本記事)
- 第2回:生物多様性とは何か
- 第3回:ISO14001における生物多様性への取組み
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