ISO14001:2026で求められる「生物多様性のリスクと機会」とは?― 中小製造業が今から理解しておきたい考え方 ―

ISO14001:2026の規格改訂では、
**「生物多様性」**がこれまで以上に重要なテーマとして扱われるようになっています。
ただし、ここで求められているのは
「自然保護活動をしなければならない」という話ではありません。
改訂の流れの中で注目されているのが、
生物多様性を「リスクと機会」という視点で捉える考え方です。
本記事では、
「どう判断するか」「どう文書化するか」ではなく、
なぜこの考え方が求められるようになったのかを中心に整理します。
なぜISO14001:2026で「リスクと機会」が重視されるのか
ISO14001は、2015年版以降、
「環境影響の管理」だけでなく、
不確実性を含む外部環境の変化にどう向き合うかを重視してきました。
今回の改訂では、その流れがさらに強まり、
生物多様性についても
- 環境問題の一つ
ではなく - 事業活動に影響を与え得る外部要因の一つ
として整理されつつあります。
つまり、生物多様性は
「守る・守らない」という二択ではなく、
事業を取り巻く前提条件の一部として扱われ始めているのです。
「生物多様性のリスク」とは何を指すのか(考え方)
一般的な考え方
ここでいう「リスク」とは、
違反や不祥事を意味するものではありません。
生物多様性を巡る環境の変化が、
- 将来的に事業活動へ影響を及ぼす可能性
- 安定していた前提条件が変わる可能性
を含んでいる、という意味で使われます。
重要なのは、
「直接の原因」ではなく「影響の可能性」に目を向ける視点です。
中小製造業との距離感(考え方の例)
中小製造業の場合でも、
生物多様性とまったく無関係というケースは多くありません。
例えば、
- 原材料の調達環境
- 水や土地といった自然資源との関係
- 工場や事業所の立地環境
などは、程度の差こそあれ、
生物多様性と何らかの形で関係しています。
ここで大切なのは、
「影響がある/ない」を決めることではなく、
そうした関係性が存在し得るという前提を理解することです。
「生物多様性の機会」とはどういう意味か
「機会」という言葉から、
新しいビジネスチャンスや差別化を想像されるかもしれません。
しかし、ISO14001:2026における機会は、
必ずしも積極的な投資や新規事業を意味するものではありません。
生物多様性との関係を把握し、
適切に整理・説明できる状態にしておくこと自体が、
- 取引先からの信頼
- 審査時の説明のしやすさ
- 組織としての安定性
につながる可能性がある、
という考え方です。
つまり、「何かを始める機会」ではなく、「安定させる機会」
と捉える方が現実的でしょう。
気候変動との違いと、混同しやすいポイント
生物多様性は、しばしば気候変動と一緒に語られますが、
両者は整理の視点が異なります。
- 気候変動
排出量、削減、対策といった
「行動」や「数値」に焦点が当たりやすいテーマ - 生物多様性
事業活動と自然との
「関係性」や「影響・依存」に目を向けるテーマ
同じ環境分野であっても、
求められる考え方は異なることを理解しておくことが重要です。
「全部やらなくていい」という考え方が重要な理由
ISO14001:2026で生物多様性が注目されているからといって、
すべての組織が同じ対応を求められるわけではありません。
重要なのは、
- 生物多様性を無視しないこと
- 関係性について一度は考えたことが分かる状態にすること
です。
網羅的な対応や、
形式的な活動を増やすことが目的ではありません。
「考えた結果、こう整理した」
というプロセスそのものが、ISO14001の考え方に沿っています。
次のステップは「自社に当てはめて考えること」
ここまでで整理できるのは、
生物多様性をリスクと機会として捉える考え方までです。
実際には、
- 事業内容
- 立地条件
- 取引構造
によって、
どこまで関係があるか、どのように整理するかは異なります。
そのため、
最終的な判断や文書への反映は、
自社の状況を踏まえた個別の検討が必要になります。
生物多様性は、
「答えが決まっているテーマ」ではありません。
だからこそ、段階を分けて理解し、整理していくことが大切です。
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