ISO14001:2026で求められる「生物多様性」への向き合い方― 中小製造業が“今から”できる実務整理と次の一歩 ―

ここまでのシリーズでは、
ISO14001:2026改訂で注目される**「生物多様性」**について、
- そもそも生物多様性とは何か
- 自然界のバランスが崩れると何が起きるのか
- なぜ今、ISO14001で生物多様性が重視されるのか
- 中小製造業の事業活動と、どのように関係するのか
といった点を、できるだけ身近な視点で整理してきました。
最後に本記事では、
「では、実務として何を意識すればよいのか」
「今の段階で、どこまで対応しておけば十分なのか」
を整理し、本シリーズのまとめとします。
生物多様性は「特別な活動」ではない
生物多様性という言葉から、
- 自然保護活動
- 生態系調査
- 大企業や行政の取り組み
をイメージされる方も多いかもしれません。
しかし、ISO14001:2026で求められているのは、
そうした“専門的活動そのもの”ではありません。
求められているのは、
自社の事業活動が、周囲の自然環境や生態系に
どのような影響を与える可能性があるかを理解し、
必要に応じて配慮・管理しているか
というマネジメントの視点です。
これは、これまで対応してきた
- 大気・水質・廃棄物
- エネルギー・資源使用
と同じ延長線上にあります。
中小製造業が押さえておくべき「実務の着眼点」
本シリーズを通じて見えてきた、
中小製造業にとっての実務的な着眼点は、次のように整理できます。
① 事業活動と自然環境との関係を把握する
- 工場立地や周辺環境(河川・森林・農地など)
- 使用している原材料・資源
- 排水・排気・廃棄物の行き先
「影響があるか・ないか」を結論づける前に、
まず関係性を洗い出すことが重要です。
② 生物多様性の「リスク」と「機会」を整理する
- 規制強化・取引先要求の変化
- 資源制約や調達リスク
- 地域社会との関係性
すぐに対策が必要なものだけでなく、
将来起こり得る影響も含めて整理しているかがポイントになります。
③ 既存のISO14001の仕組みに組み込む
新しい文書や制度を増やす必要はありません。
- 環境側面の特定
- 法規制・順守評価
- 目的・目標
- 運用管理・教育
といった既存の枠組みの中で、生物多様性の視点を反映できているかが重要です。
「今は何もしなくてよい」ではない理由
現時点では、
- 具体的な数値目標
- 一律の対応方法
が示されていないため、
「もう少し様子を見てから…」と考えたくなるかもしれません。
しかし、ISO14001:2026では、
- 気候変動
- 生物多様性
- 資源の制約
といったテーマが、相互に関連する外部課題として位置づけられつつあります。
審査の場でも、
「把握していません」「考えていません」
という状態は、
説明が難しくなる可能性が高いと考えられます。
今の段階で重要なのは、
完璧な対応ではなく、“考えた形跡”を整理しておくことです。
本シリーズの位置づけと、次のステップへ
この生物多様性シリーズは、
- ISO14001:2026改訂の背景理解
- 中小製造業としての考え方整理
を目的とした情報整理コンテンツです。
実際に、
- 自社に即したリスク・機会の洗い出し
- 環境マニュアルや手順書への落とし込み
- 運用への反映・定着
まで進めるには、
個別の事業内容や現場状況を踏まえた検討が必要になります。
そのため、
「考え方は理解できたが、実務への落とし込みに不安がある」
と感じられた場合には、
次のステップとして具体的な支援プログラムを検討する、という流れが自然です。
まとめ
- 生物多様性は、ISO14001の延長線上にあるテーマ
- 中小製造業でも、無関係ではない
- 今求められているのは「理解し、整理していること」
- まずは既存の仕組みの中で、視点を反映することが重要
ISO14001:2026改訂に向けた準備は、
一度にすべてを完成させる必要はありません。
本シリーズが、
「自社として何を考えるべきか」を整理する
最初の一歩となれば幸いです。
▶ 生物多様性シリーズの全体像はこちら
ISO14001:2026改訂で注目される「生物多様性」対応ハブ― 中小製造業が今から理解しておきたい考え方と実務整理 ―
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