ISO14001:2026(DIS)改訂ポイント解説-気候変動が求める中小企業の環境マネジメントとは

ISO14001は、企業の環境マネジメントシステム(EMS)を定めた国際規格です。
2026年に予定されている改訂では、これまで以上に**「気候変動」への対応**が重視される方向で議論が進んでいます。
「環境規格だからCO₂削減が中心になるのでは?」
「中小企業にはハードルが高いのでは?」
こうした不安を感じている方も多いかもしれません。
しかし、ISO14001:2026で求められるのは、いきなり高度な数値管理や目標設定ではありません。
本記事では、
- ISO14001:2026改訂の背景
- 気候変動がどのように位置づけられるのか
- 中小企業が押さえるべき実務ポイント
を分かりやすく解説します。
1. なぜISO14001で「気候変動」が重視されるのか
ISO14001はこれまでも、環境側面・法規制・継続的改善を重視してきました。
今回の改訂では、それに加えて**「気候変動が企業活動に与える影響」**が明確に意識されています。
背景にある社会的要請
- 地球温暖化の進行と異常気象の頻発
- 脱炭素社会への国際的な流れ
- サプライチェーン全体での環境配慮要求の拡大
これにより、ISO14001でも
「環境への影響」だけでなく「気候変動が事業に与える影響」
を考慮することが求められるようになっています。
2. ISO14001:2026改訂で注目されるポイント(気候変動関連)
① 気候変動を考慮した「環境側面」の評価
従来の環境側面評価では、
- 電力使用量
- 廃棄物
- 排水・排ガス
などが中心でした。
改訂後はこれに加えて、
- エネルギー使用が気候変動に与える影響
- 温室効果ガス排出との関係
- 気候変動による操業リスク
といった視点が重要になります。
ポイントは、
「自社の活動が気候変動とどう関係しているか」を整理しているか
です。
② 気候変動を踏まえたリスク・機会の検討
ISO14001では、組織を取り巻く「リスクと機会」を明確にすることが求められています。
気候変動に関する例としては、
- 猛暑による作業環境悪化・生産性低下
- 豪雨・台風による操業停止リスク
- エネルギー価格高騰によるコスト増
- 環境配慮を評価する顧客からの受注機会
などが挙げられます。
重要なのは、
良い・悪いの両面から検討しているか
という点です。
③ 経営としての関与がより重要に
ISO14001:2026では、トップマネジメントの役割が一層重視されると考えられています。
- 気候変動を経営課題として認識しているか
- 方針や目標に反映されているか
- 担当や役割が明確か
形式的な文書よりも、
「経営として検討し、判断している事実」
が問われる方向です。
3. 中小企業が誤解しやすいポイント
「CO₂削減目標を数値で示さなければならない?」
→ 必須ではありません。
まずは、
- 現状を把握している
- 課題を認識している
- 可能な範囲で対応を考えている
この段階で十分です。
「専門的な知識がないと対応できない?」
→ 専門家レベルは不要です。
自社の業務を一番理解しているのは現場と経営者です。
難しい計算よりも、
自社なりの整理と説明が重視されます。
4. 中小企業が今から取り組むべき実務対応
ISO14001:2026改訂に向けて、以下の3点を押さえておくと安心です。
① 気候変動に関する簡易整理を行う
- 自社のエネルギー使用
- 気候変動による影響
- 顧客・社会からの要求
A4一枚程度にまとめるだけでも十分です。
② 既存の環境活動と結びつける
- 省エネ活動
- 設備更新
- 作業環境改善
これらを
「気候変動への対応の一環」として位置づける
ことが重要です。
③ 文書はシンプルでOK
過度に作り込む必要はありません。
- 環境側面表の見直し
- 会議議事録
- チェックリスト
実態に合っていることが最優先です。
5. まとめ|ISO14001:2026改訂は負担ではなく「整理の機会」
ISO14001:2026改訂における気候変動対応は、
中小企業にとって 新たな義務を増やすものではありません。
- これまで行ってきた環境活動を整理する
- 経営としての考えを明確にする
- 将来リスクに備える
そのための「きっかけ」が、今回の改訂です。
次の記事では、
ISO9001・ISO14001改訂に備える具体的な進め方
を、中小企業向けにさらに実務的な視点で解説していきます。
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