ISO14001:2026改訂 | ライフサイクルの視点を身近な事例で理解する― 中小製造業の製品・業務に当てはめて考える ―

1. なぜ「身近な事例」で考える必要があるのか
前回の記事では、「ライフサイクルの視点」とは
製品やサービスを“使っている瞬間”だけでなく、その前後を含めて一連の流れとして捉える考え方
であることを整理しました。
ただし、
- 原材料の採掘
- 使用後の廃棄やリサイクル
- サプライチェーン全体への影響
といった言葉は、中小製造業の現場から見ると
「どこか遠い話」「自社には関係なさそう」
と感じられることも少なくありません。
そこでこの記事では、
あえてISOや専門用語から少し距離を置き、身近な製品・業務の流れに当てはめて考える
ことで、「ライフサイクルの視点」を具体的に理解していきます。
2. 身近な製品で考える:金属加工部品の一生
ここでは、多くの中小製造業に共通する
**「金属加工部品」**を例に考えてみましょう。
製品の“真ん中”だけを見た場合
普段、私たちが意識しやすいのは次の部分です。
- 図面を受け取る
- 材料を加工する
- 検査をして出荷する
これは、いわば**製品のライフサイクルの“真ん中”**にあたります。
ライフサイクルの視点で広げてみる
ここに「ライフサイクルの視点」を加えると、視野は次のように広がります。
① 原材料はどこから来ているか
- 鉄鋼・アルミはどのように作られているか
- 材料調達時に、環境負荷や供給リスクはないか
② 加工・製造の段階で何が起きているか
- 電力・ガス・圧縮空気の使用量
- 切削油・溶接ヒューム・騒音
- 端材やスクラップの発生
③ 出荷・輸送での影響
- 梱包方法(過剰になっていないか)
- 輸送距離や輸送手段
④ 顧客でどのように使われるか
- 長く使われる部品か、消耗品か
- 故障や不具合が起きた場合の影響
⑤ 使用後はどうなるか
- 廃棄されるのか、リサイクルされるのか
- 分別しやすい設計になっているか
この一連の流れすべてが、「ライフサイクル」です。
3. 「環境にやさしい=特別なこと」ではない
ここで誤解されやすい点があります。
ライフサイクルの視点=環境配慮のために何か新しいことをやらなければならない
実際には、すでに多くの中小製造業が、結果的にライフサイクルを意識した行動を取っています。
例えば、
- 端材を減らすための歩留まり改善
- 不良を減らすための工程改善
- 梱包を簡素化して輸送効率を上げる工夫
これらは
コスト削減・品質向上を目的として始めた活動であっても、
結果としてライフサイクル全体の負荷低減につながっています。
ISO14001が求めているのは、
「特別な環境活動」ではなく、
こうした取り組みを“一段引いた視点”で整理し、説明できるようにすること
とも言えます。
4. 業務プロセスに当てはめて考える
ライフサイクルの視点は、製品だけでなく業務そのものにも当てはまります。
例:図面変更への対応
- 図面変更が頻発すると
- 再加工
- 廃棄部品の増加
- 納期遅延
といった影響が連鎖的に発生します。
これは、
「設計 → 製造 → 出荷 → 顧客満足」
という業務のライフサイクル全体に影響している状態です。
単に「現場が大変」という話ではなく、
前工程での判断が、後工程の負荷を増やしている
という構造を捉えることが、ライフサイクルの視点です。
5. ISO14001:2026との関係(ここでは軽く理解する)
ISO14001:2026では、
- 環境影響を「自社の敷地内」だけでなく
- 上流(調達)・下流(使用・廃棄)まで含めて考える
という考え方が、これまで以上に重視されます。
ただし、この記事の段階で
- 専門的な評価手法
- 数値化の方法
まで理解する必要はありません。
まずは、
「自社の仕事は、どこから始まり、どこまで影響しているのか?」
を自分たちの言葉で説明できるようになることが第一歩です。
6. まとめ:ライフサイクルの視点は「考え方の整理」
この記事でお伝えしたかったポイントは、次の3つです。
- ライフサイクルの視点とは
→ 製品・業務を一連の流れとして見る考え方 - すでに中小製造業の現場には
→ その考え方の“芽”がたくさんある - ISO対応とは
→ 新しいことを始めるより、今の取り組みを整理し直すこと
次の記事では
ISO14001:2026で重視される「ライフサイクルの視点」を、規格要求と実務の関係から整理し、
中小製造業が無理なく取り組むための考え方を解説します。
👉 【記事③】ISO14001で求められる「ライフサイクルの視点」とは?― 規格要求と中小製造業の実務をつなげて理解する ―
ライフサイクルの視点についての全体像はこちら
身近な製品・業務を例に、ライフサイクル視点の考え方を見てきました。
他の記事も含めて「考え方 → 規格との関係 → 実務整理」まで一通り整理したい場合は、ハブページから全体像をご確認ください。
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