ISO14001:2026で求められる「ライフサイクルの視点」の位置づけ― 箇条との関係と実務での考え方 ―

はじめに|「ライフサイクルの視点」は“新しい要求事項”ではない
ISO14001:2026で注目されているキーワードの一つが
**「ライフサイクルの視点」**です。
ただし、最初に押さえておきたいのは次の点です。
ライフサイクルの視点は、
単独の新しい要求事項が追加されたものではありません。
ISO14001:2015の時点からすでに取り入れられており、
2026改訂ではその考え方の重要性が、より明確に位置づけられた
と理解するのが適切です。
本記事では、
- ISO14001の中で「ライフサイクルの視点」がどこに位置づけられているのか
- どの箇条と、どのようにつながっているのか
- 中小企業の実務では、どのレベルで考えればよいのか
を、規格構造に沿って整理します。
1. ISO14001における「ライフサイクルの視点」の基本的な考え方
ISO14001でいう「ライフサイクルの視点」とは、
- 製品やサービスを
- 原材料の調達から
- 製造、輸送、使用、廃棄に至るまで
一連の流れとして捉え、
自社が関与できる範囲で環境影響を考慮すること
を意味します。
ここで重要なのは、
- すべてを管理・コントロールすることは求められていない
- 「影響を理解し、配慮する視点を持つ」ことが本質
という点です。
2. ライフサイクルの視点が明確に示されている箇条
2.1 箇条6.1.2 環境側面(最も中心となる位置づけ)
ライフサイクルの視点が最も直接的に表れるのが
**箇条6.1.2(環境側面)**です。
ここでは、
- 通常時・異常時・緊急時に加え
- ライフサイクルの視点を考慮して環境側面を特定する
ことが求められています。
つまり、
- 自社工場の中だけを見るのではなく
- 原材料の調達段階
- 製品出荷後の使用・廃棄段階
にも「目を向ける」ことがポイントになります。
👉 実務ポイント
すべてを洗い出す必要はありません。
「影響が大きそうなところ」「関係が深いところ」に絞って考えれば十分です。
2.2 箇条8.1 運用管理との関係
箇条8.1では、環境側面に基づいた運用管理が求められます。
ここでライフサイクルの視点は、
- 設計・開発段階での配慮
- 外注先・委託先への要求事項
- 購買条件への反映
といった形で関係してきます。
👉 ポイント
「自社で直接作業しない工程」であっても、
影響を与えられる部分には配慮する
という考え方です。
2.3 箇条8.2 緊急事態への準備及び対応とのつながり
ライフサイクルの視点は、
緊急事態の想定にも影響します。
例えば、
- 輸送中の事故
- 外部委託先での環境事故
- 廃棄段階での不適切処理
など、自社敷地外で起こり得る事象も
「完全に無関係ではない」場合があります。
👉 ここでも重要なのは
現実的に想定できる範囲に絞ることです。
3. その他の箇条との“間接的なつながり”
ライフサイクルの視点は、
特定の箇条だけに閉じた考え方ではありません。
箇条4.1/4.2(組織の状況・利害関係者)
- 原材料供給の不安定化
- 廃棄規制の強化
- 顧客からの環境配慮要求
これらは、ライフサイクル全体を見て初めて
「外部の課題」として認識できます。
箇条6.1.1(リスク及び機会)
- 原材料リスク
- 将来の規制強化
- 環境配慮型製品への市場ニーズ
も、ライフサイクルの視点と密接につながっています。
4. ISO14001:2026で「位置づけ」が強調された背景
2026改訂では、
- 気候変動
- 資源制約
- 生物多様性
といったテーマが強く打ち出されています。
これらはすべて、
自社の敷地内だけを見ていては対応できない課題
です。
そのため、
ISO14001全体を貫く“思考の軸”として
ライフサイクルの視点の重要性が、
より明確に示されたと考えることができます。
5. 中小企業の実務では「どこまでやればよいのか」
最後に、最もよく聞かれる疑問に触れておきます。
「結局、どこまでやればISO的に十分なのか?」
答えはシンプルです。
- 自社の事業内容に照らし
- 影響が大きい・関係が深い部分を選び
- 文書と運用で説明できるレベルで整理する
これで十分です。
LCA(ライフサイクルアセスメント)を実施する必要はありません。
おわりに|次の記事へ
本記事では、
- ISO14001の中での
「ライフサイクルの視点」の位置づけ - 各箇条との関係性
を整理しました。
次回(記事④)では、
ISO14001:2026への移行を見据えて、
ライフサイクルの視点をどのように既存の仕組みに組み込むか
を、より実務寄りの視点で解説していく予定です。
ライフサイクルの視点についての全体像はこちら
本記事では、ライフサイクル視点が ISO14001 のどの箇条と関係しているのかを整理しました。
考え方・事例・実務整理までを横断的に確認したい場合は、以下のハブページが起点になります。
👉 ISO14001:2026「ライフサイクルの視点」対応ハブページ
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