やるべきことを「目標」に落とし込めていますか?~ISO14001コンサルタントの視点による「6.2.1 環境目標」の実践ポイント~
環境マネジメントを進めるうえで、「どこまで、何をやるのか」がはっきりしていないと、取り組みが曖昧になってしまいます。
ISO14001の【6.2.1 環境目標】は、そんな迷いをなくすための「具体的な行動の指針」をつくるステップです。
今回はこの条項について、初心者でもわかるようにやさしく解説し、実際の現場での事例も交えてご紹介します。
環境目標って、そもそも何?
環境目標とは、**組織が「環境に配慮した行動をするために達成したい具体的なゴール」**のことです。
たとえば…
- 電気の使用量を前年比10%削減する
- 有機溶剤の排出量を20%減らす
- 廃棄物の再資源化率を80%以上にする
など、環境方針に沿って、測定可能な目標を設定することが求められます。
規格が求める「環境目標」のポイント
ISO14001では、環境目標を設定する際に以下のことを考慮するよう定めています。
◆ 1. 環境方針との一貫性
組織が掲げている「環境への取り組み方針」に沿った目標であること。
◆ 2. 測定可能であること
数値化できる、もしくは達成したかどうか評価できるものであること。
◆ 3. 以下の3点を考慮すること(重要!)
- 著しい環境側面
→ 環境に大きな影響を与えている活動(例:排気、排水、エネルギー使用など)
- 関連する順守義務
→ 環境関連の法律、条例、契約などを守る必要があるもの
- リスクと機会
→ 環境に関する事故のリスク、または改善のチャンス
◆ 4. 伝達と見直しができること
関係者にきちんと伝えられ、必要に応じて更新できる目標であること。
目標だけで終わらせない!計画の立て方
目標を掲げただけでは、行動につながりません。
そのため、次のような「実行計画」を作ることも求められます。
- 誰が:責任者の明確化
- 何を:具体的な活動内容
- いつまでに:期限の設定
- どうやって進捗を確認するか:測定・評価の方法
- 必要なリソースは?:人、予算、時間の確保
【事例紹介】有機溶剤の排出削減に挑んだ製造業のケース
◆ 企業プロフィール
金属加工を行うA社(従業員45名)
◆ 課題
洗浄工程で使用していた有機溶剤が空気中に排出されており、「著しい環境側面」と判断。大気汚染防止法の規制にも関係していた。
◆ 設定した目標
2026年3月までに、有機溶剤の排出量を20%削減する。
◆ 計画内容
実施項目 |
内容 |
責任者 |
環境管理責任者+製造部門 |
手段 |
回収装置の導入、作業手順の見直し、教育実施 |
測定方法 |
溶剤の使用量・回収量の記録と比較 |
進捗確認 |
半年ごとのモニタリング |
リソース |
設備投資200万円、教育時間の確保 |
結果として、翌年度には25%の排出削減を達成し、地域住民からの信頼も向上しました。
まとめ:目標は“環境経営”の起点になる
ISO14001の環境目標は、単なる数字合わせではありません。
自社の活動のどこに環境リスクがあるか、何を改善すべきかを考えるプロセスそのものが大切です。
- 環境に大きな影響を与えること(著しい環境側面)
- 守るべき法律(順守義務)
- リスクとチャンス(リスク・機会)
これらをしっかり考えて、「意味のある目標」を立て、行動につなげていきましょう。
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ISO14001「著しい環境側面」の見つけ方と対応方法とは?については、下記ブログを参照してください。
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