ISO14001要求事項「7.2 力量」の実践ポイント~やるべき仕事に、必要な“力”はそろっていますか?~
環境マネジメントシステム(EMS)を運用していく中で、「誰がやっても同じ結果が出る仕組み」を目指すのは理想です。
ですが、実際には**「人の知識や技術」が環境パフォーマンスに直結する場面**が多く存在します。
今回は、ISO14001の中でも現場に密着した項目「7.2 力量」について、やさしく解説します。
■ ISO14001「7.2 力量」とは?
この項目が求めているのは、「環境に関わる業務を行う人が、その仕事に必要な知識やスキルを持っているかを確認しなさい」ということです。
ここでいう“力量”とは、以下のような要素を指します:
- 法令・マニュアルなどの知識
- 作業手順や機器操作などの技術
- 環境配慮の必要な作業に関する経験
そして、力量が足りないと判断された場合には、教育・訓練を通じて補うことが必要です。
■ “環境パフォーマンスに影響を与える業務”とは?
規格では、「環境に影響を与える業務」に対して特に力量が必要だとしています。
どんな業務が該当するか、具体的な例を見てみましょう。
▼事例①:塗装工場
- 対象業務:塗料の調合・塗装作業
- 環境影響:VOC(揮発性有機化合物)の排出
- 必要な力量:適切な希釈方法、安全な保管方法、換気設備の使用方法など
▼事例②:金属加工工場
- 対象業務:使用済み切削油の処理
- 環境影響:不適切な処理による水質汚染
- 必要な力量:廃棄物分類の知識、処理ルールの理解
▼事例③:運送業
- 対象業務:車両運転、積み込み
- 環境影響:燃料消費、CO₂排出
- 必要な力量:エコドライブ技術、アイドリングストップ習慣
■ 組織が行うべきことは?
ISO14001では、次の4ステップで“力量の確保”を求めています。
- 必要な力量の特定
「この業務に必要な知識・スキルは何か?」を明確にする
- 現在の力量を評価
教育歴・経験・資格などをもとに評価する
- ギャップがあれば教育・訓練
必要な訓練を実施し、力量を補う
- 訓練や評価の記録管理
教育記録や力量確認の履歴を残す
■ よくある課題と改善のヒント
- 課題1:ベテラン任せで文書化されていない
→「誰がやっても同じ作業ができる」ように手順書や教育記録を整備しましょう。
- 課題2:資格がある=力量があると判断している
→実務経験や作業の理解度も加味して評価することが重要です。
- 課題3:教育の記録が残っていない
→社内研修の実施記録や、OJTの内容も記録として残しておくと審査でも安心です。
■ まとめ:人の力が、環境の力になる
環境マネジメントは“仕組み”と“人”の両輪で回ります。
現場で直接手を動かす人の理解と行動が、環境への影響を大きく左右するのです。
「ちゃんと分かっている人が、ちゃんとしたやり方で作業する」
――その当たり前をつくるのが、ISO14001の「7.2 力量」の役割です。
▶️ 関連記事
- ISO14001「著しい環境側面」の見つけ方と対応方法とは?
お気軽にお問い合わせください。
ISO(9001/14001)一日診断、認証取得のコンサルタント、現状のシステムの見直しと改善、内部監査教育や支援、ご質問などお気軽にお問合せ下さい。貴社のニーズに合う最善のご提案とサポートをご提供いたします。