ISO9001を“使える仕組み”にする5つの設計ポイント〜形だけで終わらせない、現場で機能するISOの作り方〜06
現場で機能するISOはどのように作ってゆけば良いのでしょうか?この記事では、中小製造業でも実践できる
“使えるISO”を作るための5つの設計ポイントをわかりやすく解説します。
「うちのISO、正直“使ってない”んです…」
ISO9001を導入し、審査もクリアしている。
でも実際の現場では、
- 文書があるだけで誰も見ていない
- 審査前だけ慌てて記録を整える
- 改善活動とISOが完全に切り離されている
こんな状態に心当たりはありませんか?
それは、「形だけのISO」になってしまっているサインです。
ISOの本来の目的は、「品質の安定と継続的改善」。
そのためには、現場で使える“仕組み”としてISOを設計することが不可欠です。
この記事では、中小製造業でも実践できる
“使えるISO”を作るための5つの設計ポイントをわかりやすく解説します。
ISOは“業務に溶け込んでこそ”意味がある
ISO9001は「品質マネジメントシステム(QMS)」の国際規格ですが、
“規格に合わせた仕組み”を作っても、業務に合っていなければ運用されません。
たとえば、
- ISOの手順と実際の仕事の流れが違う
- 文書が難しすぎて、現場の人が理解できない
- 記録が業務負担になり、敬遠されてしまう
これでは、せっかくのISOが**「余計な仕事」扱い**になってしまいます。
▶ 逆に言えば、業務と一体化した仕組みにすれば、
ISOは現場の質を高める“改善ツール”として活躍します。
現場で使えるISOに変える5つの設計ポイント
✅ ① 用語は“現場の言葉”で書く
ISO9001には「力量」「文書化された情報」「リスク及び機会」など、
やや抽象的な表現が多く登場します。
これをそのまま使うと、現場ではこうなります:
「意味がわからないから読まない」
「ISOの人だけがわかっていればいいんでしょ?」
▶ 対策はシンプル。社内の言葉・実務に合った表現に変換することです。
たとえば:
ISO用語 |
現場での言い換え例 |
是正処置 |
問題が起きたあとの再発防止対応 |
力量 |
作業ができるかどうかの目安 |
品質目標 |
今年の改善目標・目指す数値 |
伝わる言葉で設計すれば、社員は「読む・理解する・動ける」ようになります。
✅ ② 文書・記録は“最小限”でいい
「ISOって、とにかく文書が多いイメージがある…」
という声をよく聞きます。
でも実際には、ISO9001で**“絶対に必要な記録”はごく一部だけ**。
重要なのは「意味のある記録を、使いやすい形で残すこと」です。
記録を増やしすぎるとどうなる?
- 毎日の記入が負担になり、形骸化
- 記録が溜まるだけで活用されない
- 「記録=めんどう」という印象がついてしまう
▶ だからこそ、「これは何のための記録か?」を明確にし、必要最低限に絞るのが基本です。
✅ ③ 業務フローと連動して設計する
ISOの仕組みは、会社の“動き”に合わせて設計するのが鉄則です。
例:製造業の典型的な流れ
- 受注(営業)
- 設計・製造準備
- 製造・加工
- 検査
- 出荷
- アフター対応・クレーム処理
▶ この流れに沿って「記録はどこで必要か?」「誰が関与するか?」を考え、
仕組み(文書・記録・手順)を設計すれば、業務の中で自然にISOが回るようになります。
✅ ④ “現場での試運用”を前提に設計する
多くの会社では、「文書を作ったら完成」と思いがちです。
でも実際は、「使ってみたら不便だった」「記録が定着しない」ということもよくあります。
▶ 解決策は、「まず動かしてみて、合わないところは見直す」という柔軟な考え方。
- 作業手順書を試しに現場で使ってもらう
- 記録様式を1週間回してみて、記入のしやすさを確認
- 形式だけでなく「使いやすいか」を定期的にレビュー
“育てていく仕組み”という視点が、定着のカギになります。
✅ ⑤ 教育・改善活動と“つながった”仕組みにする
ISOは文書や記録だけでは機能しません。
教育、クレーム対応、不適合処理、改善活動などと連動してこそ効果が発揮されます。
たとえば:
- クレーム対応 → 是正処置 → 教育 → 再発防止へつなげる
- 教育記録 → 手順書改訂 → 検査結果との連動で改善につなげる
▶ バラバラの仕組みを「線でつなぐ」ことで、ISOが“改善の土台”として活きてきます。
“使えるISO”がもたらす3つの効果
🌟 ① 判断スピードが上がる
「どうすればいいか」が仕組みとして整っていれば、
社員は迷わず判断できる → ミスが減り、対応も早くなる。
🌟 ② 記録が“財産”になる
ためるためではなく、振り返り・分析・改善に活かせる記録になれば、組織の学習が進む。
🌟 ③ 社員が“自分ごと”として動き出す
仕組みに納得すれば、「やらされ感」が減り、
社員が“考え、動き、改善する”組織に変わっていく。
“ISOに合わせる”のではなく“自社に合わせて設計する”
ISO9001は、型にはめる制度ではありません。
会社の業務や文化に合った形で設計することで、はじめて機能します。
今回ご紹介した5つの設計ポイント:
- 用語を“現場の言葉”にする
- 文書・記録は最小限
- 業務フローと連動させる
- 試運用を前提に柔軟に作る
- 教育・改善とつなげて一体化する
これらを意識するだけで、ISOは“使える仕組み”に変わり、現場も動き出します。
📘 次に読むべき記事:
👉ISO導入の成功事例|製缶業が変わった現場主導の仕組みづくり〜“やらされ感”をなくした、使えるISOのリアル〜07 | 令和グループ(ISOコンサルティング)
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ISOは“現場で動いてこそ”意味がある仕組みになる
ISO9001は「認証を取ること」が目的ではなく、現場で実際に活用されてこそ意味のある仕組みになります。
用語を現場の言葉に置き換え、文書や記録を最小限にとどめ、業務フローと連動した設計にすることがポイント。
さらに、試運用を前提に柔軟に見直し、教育や改善活動と連動させることで、ISOが会社全体の“動く仕組み”へと進化します。形だけの運用から脱却し、現場が自ら動き出すISOへ変えていきましょう。