令和グループ(ISOコンサルティング)

ISO取得後にやるべき運用と改善のポイント〜形骸化を防ぎ、現場に定着させるための5つの習慣〜11

 

 

「ISO、取ったはいいけど…その後どうすれば?」

 

ISO9001の認証を取得した多くの中小企業が、こんな壁に直面します。

  • 「認証は取れたけど、社内は何も変わっていない」
  • 「文書と記録はあるけど、誰も使っていない」
  • 「審査前だけ慌てて帳尻を合わせている」

 

ISOは「取ること」が目的ではありません。

“使って回して改善する”ことこそが、ISOの本当の価値です。

 

本記事では、ISO取得後に取り組むべき運用と改善の5つのポイントを、筆者がコンサルを通じて経験した中小製造業の実例とともにご紹介します。

 

 

1. ISOは“回し続けてこそ”意味がある

 

ISOの導入当初は盛り上がっていても、時間が経つと熱が冷めてしまいがちです。

よくある形骸化パターン:

  • 審査対応だけのために文書や記録を整える
  • 担当者しか仕組みを知らない
  • 教育や改善活動が止まってしまう

 

▶ これは、“回す仕組み”が日常の中に組み込まれていない証拠です。

ISOは「回してなんぼ」の仕組み。
小さな改善でも動かし続けることで、会社の力になります。

 

 

2. 運用定着のための5つのポイント

 

✅ ① 文書・記録を“現場の使い勝手”で更新する

導入時に作った文書や様式が、いつまでもそのままになっていませんか?

  • 「現場で記入しにくい」
  • 「意味がよく分からない」
  • 「実務とズレてきた」

 

▶ そんなときは、現場の声をもとに定期的に見直すことが大切です。

 

実例:ある板金加工業での記録様式改善

  • 元の記録:複数のチェック項目と備考欄があり、書きづらい
  • 改善後:写真付き・○×形式に簡略化 → 書く人が増えた

 

記録は“きれいに残す”よりも“使える形で残す”が基本です。

 

 

✅ ② 教育を“イベント”ではなく“習慣”にする

年1回の座学だけでは、知識は定着しません。
継続的な教育のポイントは、「日常の中に組み込むこと」です。

 

おすすめの習慣化方法

  • 朝礼での5分共有(クレーム事例、記録の意味 など)
  • 作業中のOJT指導を教育記録として活用
  • 改善活動の報告を“教育の場”として扱う

 

▶ “気づき”や“経験”を共有する場を定期的に持つことで、
ISOが「現場に活きる知恵」として回り始めます。

 

 

✅ ③ 内部監査を“形”で終わらせない

内部監査を「義務」として淡々とやっていませんか?

  • 指摘を恐れて無難に終わらせる
  • 形式だけで、実務との関係がない

 

▶ これでは、せっかくの“改善のチャンス”を逃してしまいます。

 

効果的な内部監査の進め方

  • 目的は「不備を探す」ではなく「改善の種を見つける」
  • 指摘が出ても、「これは良いチャンス」と捉える空気づくり
  • 是正処置→教育→再発防止までをワンセットで回す

 

▶ 内部監査を“改善の起点”に変えるだけで、仕組みがグッと動き出します。

 

 

✅ ④ クレームや不適合は“宝の山”

不具合・クレームは、できれば避けたいこと。
でも、これをうまく使えば品質向上のチャンスになります。

 

改善サイクル例(小さな現場対応が起点に)

  1. 作業ミスによる納期遅れ発生
  2. 不適合報告書に記録
  3. 原因を検討(作業者の交代に情報引継ぎがなかった)
  4. 手順書に「引継ぎチェック欄」を追加
  5. 改定内容を朝礼で教育 → 教育記録に残す

 

▶ クレームや不適合は、改善につながる“リアルな声”。
これを回せる現場は、着実に強くなっていきます。

 

 

✅ ⑤ 年1回“仕組みそのもの”を見直す

ISOには「マネジメントレビュー(経営レビュー)」という活動があります。
これは「仕組みを整えて終わり」ではなく、見直しと改善を繰り返すことが前提なのです。

 

マネジメントレビューの活かし方

  • 現場の声、記録、クレーム、改善提案などの情報を集める
  • 実際に「今の仕組みが使えているか?」を議論
  • 必要に応じて、手順・記録様式・教育内容をアップデート

 

▶ 仕組み自体が古くなってきたと感じたら、迷わず“育て直し”ましょう。

 

 

3. よくある運用後の落とし穴と防ぎ方

 

よくある落とし穴

防ぎ方

審査前しか動かない

月1回の振り返りミーティングを設定する

担当者に丸投げ

リーダー・現場・管理部門と情報共有

改善が出てこない

改善提案箱・朝礼共有・表彰制度で促進

記録が続かない

書きやすく、使いやすい様式に更新

教育が止まっている

毎月1つのテーマで“話す場”をつくる

 

 

まとめ:ISOは「続ける工夫」で“現場の力”になる

 

ISOの真価は、「認証を取った後」にどう動かすかで決まります。
形だけで終わらせず、日常の中に溶け込む仕組みへ。
それが「使えるISO」をつくるカギです。

 

✅ 運用と改善のための5つの習慣まとめ

  1. 文書・記録は“使いやすく進化”させる
  2. 教育は“習慣化”してこそ意味がある
  3. 内部監査は“改善のきっかけ”にする
  4. 不適合・クレームは“学びの宝”と捉える
  5. 仕組み全体を“定期的に棚卸し”する

 

ISOは、無理なく“回せる仕組み”になったとき、
現場が変わり、会社が強くなります。

 

「運用が止まりかけているかも…」と感じたら、
まずは今日から“1つの習慣”を始めてみてください。

 

 

📘 次に読むべき記事:

ISO定着の鍵は“現場”にある|社員が動く仕掛けづくり

 

「一日診断」については、下記ブログを参照ください。

今のISOで満足ですか?プロが改善方向を提案する一日診断

 

 

この記事を書いた人

野田博

早稲田大学理工学部卒。住友金属工業株式会社にて製鉄所および本社勤務を経て、関連会社の経営に携わる。ISOの分野では、JQAおよびASRにて主任審査員を歴任(現役)。JQAにおいては審査品質・実績が高く評価され、TOP5%審査員として表彰された実績を持つ。対応規格はISO9001、ISO14001。現在は中小企業を中心に、実務に即したシンプルなISO導入・運用支援を行っている。

この著者の記事一覧

コメントは受け付けていません。

メールフォームよりお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせはこちら お問い合わせはこちら arrow_right
PAGE TOP